ヤマノイモ科

ヤマノイモ科：多様なイモ類とつる植物の世界

ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)は、単子葉植物に属する科で、世界中の熱帯から温帯にかけて広く分布しています。8属約800種もの植物を含み、その多くはヤマノイモ属(Dioscorea)に分類されます。

ヤマノイモ科植物の特徴は、つる性の草本または低木である点です。地下にできる塊茎（イモ）は、多くの種で食用や薬用に利用され、特に熱帯地域では重要な食料源となっています。花は6枚の花被片と、6本または3本の雄しべを持ち、子房下位です。多くの種は単性花で、雌雄異株のものが一般的です。果実は3室に分かれ、蒴果、液果、または翼果となります。ヤマノイモ属の種子は扁平で翼を持つのが特徴です。

ヤマノイモ科の分類

ヤマノイモ科の分類には様々な見解がありますが、大きく分けて2つのグループに分けられます。

1. つる性植物群: ヤマノイモ属(Dioscorea)を含む6属（一部の分類ではヤマノイモ属にまとめられる）は、つる性植物または低木で、葉腋から総状、穂状、または円錐状の花序を付けます。
2. 非つる性植物群: Avetra属とTrichopus属（Trichopodaceae科として分類されることもある）は、地下茎からロゼット状に茎を出し、先に1～3個の両性花をつけます。花の下には葉が1枚だけ付くのが特徴で、インド洋沿岸に隔離分布しています。

ヤマノイモ属(Dioscorea)の代表種

ヤマノイモ属には、多くの有用植物が含まれます。代表的な種を以下に紹介します。

ダイジョ(Dioscorea alata L.): 熱帯・亜[[熱帯]]で広く栽培されています。日本ではかつて栽培されていましたが、寒さに弱いため現在はほとんど見られません。イモの形は紡錘形、長楕円形、扇形、棒状など多様です。
ニガカシュウ(Dioscorea bulbifera): 日本にも自生する種で、名前の通り苦味があり、有毒です。しかし、熱帯地方では食用や薬用に利用されている品種も多く存在します。イモは小さく、むかごの方が多く利用されます。「宇宙イモ」と呼ばれる巨大なむかごをつける品種もあります。
大和芋・伊勢芋・丹波芋(Dioscorea polystachya): 丸みを帯びた形のイモが特徴です。地域によっては「つくね芋」とも呼ばれます。他に、イチョウの葉のような扁平な形をした「イチョウ芋（仏掌芋）」や、細長い「長芋」など、様々な形状のイモがあります。長芋は一年で収穫できることから「一年芋」とも呼ばれ、自然薯と混同されることもありますが、別種です。
ヤマノイモ（自然薯）(Dioscorea japonica): 日本に古くから自生する種で、滋養強壮効果があるとされ、食用や薬用に利用されています。うねりのある細長いイモが一般的ですが、長芋のように真っ直ぐ伸びるものもあります。収穫までに3～4年かかることもあります。

その他のヤマノイモ科植物

ヤマノイモ属以外にも、Borderea属、Epipetrum属、Rajania属、Stenomeris属、Tamus属などの属が存在します。APG植物分類体系では、タシロイモ科(Taccaceae)もヤマノイモ科に含める分類もあります。

ヤマノイモ科は、その多様な種と形態、そして人間生活との深い関わりを持つ重要な植物群です。食用、薬用としてだけでなく、その独特な形状や生育様式も、私たちに多くの興味を与えてくれます。今後も、その多様性と生態について、更なる研究が期待されます。

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