ヤマハ・DXシリーズ

DXシリーズ（ディーエックス・シリーズ）

DXシリーズは、ヤマハが製造したFM音源を搭載したシンセサイザー群であり、1980年代の音楽シーンにおいて画期的な影響を与えました。このシリーズの製品は、きらびやかな音色や金属的な響きを持ち、特にエレクトリックピアノのサウンドが新鮮だったため、当時の主流を変えるほどの人気を誇りました。DXシリーズには、FM音源を使用したラックマウントタイプのTXシリーズも存在します。

概要

DXシリーズは、フルデジタル構成という点が特筆され、音色データの作成・保存・再現が容易であることが特徴です。特に、MIDI端子の早期装備によって、他のデジタル楽器との接続が簡単となり、アナログシンセサイザーの限界を打破しました。これにより、1980年代中頃には多くのミュージシャンがDXシリーズの音色を採用するようになりました。特に、DX7に搭載されたエレクトリックピアノのサウンドは、小型でありながら美しい音色を提供し、従来のローズ・ピアノのシェアを奪ったほどの影響を持ちました。

歴史

FM音源は1970年代にスタンフォード大学で開発され、ヤマハは1973年にその独占契約を取得しました。1980年代の技術革新により、FM音源は実用化され、DXシリーズの誕生へと繋がりました。初期モデルのDX7は、61鍵のキーボードと6オペレーター・32アルゴリズムのFM音源を備え、最大同時発音数は16音に達しました。この特性により、DX7は瞬く間に「歴史的名機」としての地位を確立しました。

モデル一覧

DX7

1983年に発売されたDX7は、当初から世界初のフルデジタルシンセサイザーとして名を馳せ、多くの音楽ジャンルで利用されました。また、液晶ディスプレイを備えた初のシンセサイザーとして、その利便性も評価されています。独自のFS鍵盤を使用することで、打鍵の強弱をスムーズに感知し、高い演奏性を実現しています。

DX9

同じく1983年に発売されたDX9は、DX7の廉価版として登場しました。設計はDX7に近いものの機能の一部が省略されており、人気はDX7には及びませんでしたが、現在ではレアモデルとなっています。

DX1とDX5

DX1は84年に発売され、DX7の音源を2系統搭載した最高峰機です。DX5は、DX7の音源を2系統にしたモデルとして、機能や音質が評価されていますが、いずれも生産数は少なく、プレミア化しています。

その他のモデル

1985年のDX21やDX27など、アマチュア向けの機種も登場し、バリエーションが豊富でした。さらに、1990年代に入ってもDX200やreface DXなどが開発され、現代でもその音源はいまだ使用されています。

DXシリーズの限界と継承

DXシリーズは、その特異な音色とデジタル性によって多くのプロミュージシャンに愛されましたが、アコースティックピアノのシミュレーションには弱く、次第にPCM音源搭載のシンセサイザーにシェアを奪われることとなります。それでも、現在でもジャズやポップスでの使用が見られ、80年代特有の音色が求められる場面において活躍し続ける存在です。

以上のように、DXシリーズはただの楽器ではなく、音楽の歴史に名を刻んだ革新の象徴ともいえる存在です。

もう一度検索