ヤマハ・FZ400

ヤマハ・FZ400：個性と時代の波に翻弄されたミドルクラスネイキッド

1997年、ヤマハ発動機は新たなミドルクラススポーツバイクとして、FZ400を発表しました。400ccネイキッドモデルであるFZ400は、ヨーロッパで販売されていたFZS600をベースに開発され、FZ400Rのデザインを踏襲しつつも、独自の個性を放つ一台でした。シルバー、レッド、ブラックの3色に加え、翌年にはデイトナカラーが追加され、バリエーション豊かなラインナップを展開しました。

FZ400最大の特徴は、そのスタイリングにあります。パイプハンドルを採用したネイキッドバイクでありながら、ハーフカウルを標準装備していた点です。多くの400cc超ネイキッドモデルはビキニカウルを採用する中、FZ400はボディマウントのハーフカウルと2灯ヘッドライトを組み合わせることで、レーサーレプリカを思わせるスポーティな雰囲気を醸し出していました。このデザインは当時、斬新で目を引くものでしたが、これが後に不人気の一因となる皮肉な結果を生むことになります。

しかし、発売からわずか2年でFZ400はカタログ落ちという運命を辿ります。その背景には、デザイン性の好みが分かれたというだけでなく、1996年の免許制度改正の影響も大きく関わっていました。改正により、限定解除審査が大型自動二輪車免許となり、自動車教習所での取得が可能になったことで、大型バイクへのアクセスが容易になりました。車検制度も相まって、それまで人気を博していた400ccクラスのバイクは、大型バイクの人気に押され、市場での存在感を失っていったのです。FZ400は、時代の流れとデザイン性の両面で、市場のニーズに対応しきれなかったと言えるでしょう。

FZ400は、欧州ベストセラーモデルの血統を受け継ぎ、実用性、峠での走行性能、ツーリング性能、街乗り性能と、高いレベルでの多様性を備えていました。しかし、この万能性が「中途半端」と捉えられたことも、不人気に繋がった要因の一つと考えられます。様々なシチュエーションで高い性能を発揮する一方で、特定の用途に特化したバイクに比べて、明確な魅力が伝えきれていなかったのかもしれません。加えて、発売後にリコールが発表されたことも、販売状況に影響を与えた可能性があります。

ヤマハのFZシリーズといえば、水冷4気筒エンジンが代名詞ですが、FZ400RとFZ400を除く他のモデルでは、シリンダーブロックを45度に前傾させたジェネシス（GENESIS）エンジンが採用されていました。FZ400は、独自のエンジン設計やスタイリング、そして時代の変化が複雑に絡み合い、短い生涯を終えた、個性的なミドルクラスネイキッドバイクだったと言えるでしょう。その独特のデザインと性能は、現在でも多くのバイクファンに語り継がれています。

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