ヤマハ・Vシリーズ

ヤマハ Vシリーズ：FM音源シンセサイザーの過渡期を彩るモデルたち

ヤマハVシリーズは、FM音源シンセサイザーDXシリーズの末期に登場し、SYシリーズへと移行する間の過渡期を担った機種群です。ここでは、Vシリーズの代表的なモデルであるV2とV50を中心に、その特徴や機能を詳しく解説します。

V2（1987年）

V2は、4オペレーター8アルゴリズムのFM音源LSI「OPZ（YM2414）」を搭載したシンセサイザーです。8種類の波形を選択可能で、サイン波以外の波形からもFM音源を合成できる点が特徴です。

音源: 4オペレーターFM音源（OPZ/YM2414）
同時発音数: 8音
マルチティンバー: 8パート
音色数: プリセット128、ユーザー32
パフォーマンス: 32
エフェクト: ディレイ、パン、コード
その他: マイクロチューニング機能、イニシャル/アフタータッチ付き61鍵盤

V2は、4オペレーターのDXシリーズ（DX21、DX27、DX27S、DX100）との互換性を確保しており、特にTX81Zとはパフォーマンスを含めて高い互換性があります。TX81Zのキーボード付きモデルと捉えることもできるでしょう。ただし、専用音色ROMカートリッジはDX7IID/FDと同一形状ながらフォーマットが異なるため、互換性はありません。RAMカートリッジ（RAM4）も同様に、V2でフォーマットする必要があります。

海外では、V2ロケットを連想させるという理由から、DX11という型番でDXシリーズとして販売されました。

V50（1989年）

V50は、FM音源を搭載した珍しいワークステーション型のシンセサイザーです。V2と同様に4オペレーター8アルゴリズムのFM音源を搭載し、8種類の波形からFM音源を合成できます。

音源: 4オペレーターFM音源
同時発音数: 16音
パート数: 8パート
音色数: プリセット100ボイス、100パフォーマンス、ユーザー100ボイス、100パフォーマンス
シーケンサー: 8トラック、16000音
リズムマシン: PCM音源（61音色）
エフェクト: リバーブ、ディレイ
* その他: マイクロチューニング機能

V50は、リアルタイム、ステップ、パンチインなどの機能を備えたシーケンサーを内蔵しており、8トラック16000音の録音が可能です。また、PCM音源のリズムマシンも搭載しており、シーケンサーとは独立してドラムパートを作成できます。音色データやシーケンスデータの保存には、2DDタイプのフロッピーディスクまたはヤマハ専用メモリーカード（MCD32/MCD64）を使用します。メモリーカードはフロッピーディスクに比べて容量は少ないものの、読み書き速度が大幅に向上しています。

V50は、EOS YS200およびEOS B200の音色データやシーケンスデータと互換性があり、これらのEOSシリーズで使用されていたメモリーカードのデータを読み込んで再生できます。また、アダプター（ADP2）を使用することで、V2でフォーマットされたRAM4やV2専用音色ROMカートリッジも使用可能です。ただし、ADP2経由でRAM4をフォーマットする機能はなく、DX7IID/FDでフォーマットされたRAM4やDX7IID/FD専用ROMカートリッジは使用できません。

V80FD（未発売）

V80FDは、1989年のNAMMショーに出品された試作機です。残念ながら、製品化には至りませんでした。

Vシリーズは、DXシリーズのFM音源技術を受け継ぎつつ、新たな機能やコンセプトを盛り込んだ意欲的なモデル群でした。DXシリーズからSYシリーズへの橋渡し役として、ヤマハシンセサイザーの歴史にその名を刻んでいます。

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