ヤマハ・WR

ヤマハWRシリーズ：オフロードバイクの進化の歴史

ヤマハ発動機が製造するWRシリーズは、エンデューロおよびデュアルパーパスタイプのオートバイとして知られています。その歴史は1989年、モトクロッサーYZ250をベースに開発されたYZ250WRに始まります。2ストロークエンジンを搭載し、エンデューロ走行に適したワイドレシオトランスミッションと灯火装置を備えたこのモデルは、ヤマハのエンデューロレーサーITシリーズの後継として誕生しました。

1991年にはWR250Zへとモデル名が変更され、1992年には燃料タンク容量の増加など、YZシリーズとの差別化が図られました。1990年代前半には、国内で競技専用車として販売されました。その後、ベースモデルのYZ250のモデルチェンジに伴い、一時販売を終了した後、再び販売が再開されました。しかし、1998年には、4ストロークモデルWR400Fが登場。新生代4ストロークモトクロッサーYZ400Fと同時開発され、WRシリーズは4ストローク時代へと移行しました。2ストロークモデルは、一部地域で2000年頃まで生産されましたが、ヤマハ本社としてのWR250Zの生産は1999年をもって終了しています。

その後、WRシリーズはYZ-Fシリーズと並行して排気量の拡大を続け、WR250Fも追加。426cc、450ccモデルもラインナップに加わり、現在に至っています。WRシリーズは、北米、欧州、アジアオセアニアなど、世界各国へ輸出されています。ただし、ヤマハ本社は、いかなる国においても公道走行を前提とした仕様での生産は行っていません。これは現行の4ストロークモデルについても同様です。なお、同じWRという名称のエンデューロレーサーがハスクバーナからも発売されていますが、両社には関連性はありません。

主要モデルと特徴

WRシリーズは、競技志向のモデルから、公道走行も可能なモデルまで幅広いラインナップを展開しています。主なモデルとその特徴は以下のとおりです。

YZ250WR (1989-1990): YZ250（2ストローク）をベースに、トランスミッションをワイドレシオ化、灯火装置を追加したモデル。公道走行可能でしたが、レース仕様のため高出力で扱いが難しい車両でした。
WR250Z (1991-1998): YZ250をベースに、トランスミッション、リアホイールサイズ、燃料タンク、サスペンションなどを改良したモデル。2ストロークエンジンを搭載し、混合ガソリン仕様でした。
WR500: YZ490の空冷2ストロークエンジンとWR250Zの車体を組み合わせたモデル。IT490の後継モデル的な性格を持っていました。AMAモトクロス500ccで活躍したモデルでもあります。
WR250F (2001-): 4ストロークエンジン搭載モデル。YZ250Fをベースにサスペンション、ホイール、カムタイミング、キャブレターセッティングなどを変更。2003年以降のモデルにはセルフスターターが搭載されました。
WR400F/426F/450F (1998-): YZ400F/426F/450Fをベースに、WR250Fと同様の変更が加えられています。セルフスターターは2003年のWR450Fから搭載されました。
WR450F 2Trac: WR450Fに油圧式前輪駆動システムを搭載したモデル。ダカールラリーでクラス優勝を達成しました。
WR250R/X (2007-): アルミフレーム、DOHC水冷4ストロークエンジンを搭載。WR250Rは本格的なオフロードモデル、WR250Xはモタードモデルです。販売戦略上WRの名を冠していますが、従来のWRシリーズとは異なるカテゴリに属します。
WR125R/X (2008-): 欧州向けに発表された125ccモデル。YZF-R125と共通のエンジンを搭載し、Rはオフロード、Xはモタード仕様です。
* 2012年WR450F競技仕様車: 期間限定受注で販売された日本向けの競技仕様車。YZ250Fをベースに専用セッティングが施されました。

これらのモデルは、それぞれ異なる用途や性能特性を持つため、ライダーのニーズや好みに合わせて選択することができます。WRシリーズは、長年にわたる開発と進化を通じて、オフロードバイクシーンにおいて重要な役割を果たしてきたと言えるでしょう。

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