ヤン・ラース

ヤン・ラース（Jan Raas、1952年11月8日 - ）は、オランダ・ハイケンスザント出身の元自転車競技選手です。

経歴

アマチュア時代からその才能は注目され、ペーター・ポストに見出されます。1975年にポストが率いるTI・ローリーと契約し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。当時のTI・ローリーは、ヨープ・ズートメルク、ハニー・クイパー、ヘリー・クネットマン、そしてラースという4人のオランダ人選手を中心に、ロードレース界で最強と謳われるほどの選手層の厚さを誇っていました。この4選手は全員が世界選手権・個人ロードレースを制覇するという偉業を成し遂げています。

1976年には国内選手権で優勝。翌1977年には、ミラノ〜サンレモとアムステルゴールドレースという重要なレースを制覇します。特にアムステルゴールドレースでは、1980年まで4連覇を達成し、1982年にも優勝して、通算5回の優勝を果たしました。この記録は現在も破られておらず、同レースの最多優勝記録保持者となっています。1977年のアムステルゴールドレースでは、2位にクネットマン、3位にクイパーが入り、TI・ローリーの選手たちが上位を独占しました。1978年には、フランチェスコ・モゼールらを破ってアムステルゴールドレースで連覇を達成。さらに、パリ〜ツール、パリ〜ブリュッセルといったレースでも勝利を収めました。

1979年、地元オランダのファルケンビュルフで開催された世界選手権・個人ロードレースでは、西ドイツのディートリッヒ・テュラウとのスプリント勝負を制し、見事世界チャンピオンに輝きました。TI・ローリー勢としては、クイパー、クネットマンに続く3人目の世界チャンピオン誕生です。この年は、ロンド・ファン・フラーンデレン、E3プライス・フラーンデレン、ロンド・ファン・ネーデルランドといったレースも制し、アムステルゴールドレースでは3連覇を達成するなど、ラースにとって輝かしい1年となりました。

1980年、アムステルゴールドレースで前人未到の4連覇を達成。E3プライス・フラーンデレンでも連覇を果たしました。また、ロッテルダム6日間レースでは、同じオランダ人のレネ・パイネンとペアを組み優勝。その他にも、数多くのワンデイレースで勝利を重ねました。

1981年、アムステルゴールドレースでの5連覇は惜しくも5位に終わり逃しましたが、E3プライス・フラーンデレンでは3連覇を達成。オムロープ・ヘットフォルク、ヘント〜ウェヴェルヘム、パリ〜ツール、エトワール・ド・ベセージュといったレースでも素晴らしい走りを見せました。

1982年には、パリ〜ルーベで念願の初優勝を飾りました。アムステルゴールドレースでは、ステファン・ロッシュを下して5度目の優勝を果たし、同レースにおける自身の記録を更新。また、同年のツール・ド・フランス第9ステージ前半で行われたチームタイムトライアルでは、TIラレーチームの勝利に大きく貢献しました。

1983年には、2度目のロンド・ファン・フラーンデレン制覇を成し遂げ、国内選手権でも優勝。数々のクラシックレースで活躍を続けましたが、翌1984年、選手生命を脅かす深刻な事故に見舞われてしまいます。

1984年のミラノ〜サンレモのレース中、大規模な落車事故に巻き込まれ、背骨や内臓に重傷を負いました。同年の国内選手権では2位に入賞、ツール・ド・フランス第9ステージでは勝利を挙げるなど、一定の活躍は見せましたが、次第に満足に走ることさえ困難な状態に陥っていきます。そして、1985年5月、競技生活を続けることは不可能と判断し、引退を決意しました。

引退後は、長年にわたりレース監督としてチームを率いました。特に、スポンサー獲得においては卓越した交渉力を発揮しました。しかし、1994年に自身と妻が自宅で襲撃を受けるという事件が発生。この事件をきっかけに、1995年にラボバンクに移籍した際にはレース監督の職を退き、チームスタッフの一員としてチームを支え、2003年までその職務を務めました。

外部リンク

ヤン・ラース - サイクリングアーカイヴス（英語）

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