ユキホオジロ

ユキホオジロ

概要

ユキホオジロ（学名：Plectrophenax nivalis）は、スズメ目の鳥類で、ホオジロ科に属する一種です。その和名は「雪頬白」と書かれ、文字通り雪のように白いホオジロを意味しています。この名前は、本種の特に目立つ特徴である、繁殖期以外の時期や、繁殖期の雄に見られる白い羽毛に由来しています。ホオジロの仲間は世界中に多様な種がいますが、ユキホオジロは特に寒冷な北極圏に適応した珍しい存在です。

分布と渡り

ユキホオジロの主な繁殖地は、地球上の最も北に位置する北極圏、具体的にはユーラシア大陸から北アメリカ大陸にかけての広大な範囲です。これらの地域で夏の短い間に繁殖を終えると、厳しい冬を避けるために南へと長距離の渡りを行います。

越冬のために渡る先は、ユーラシア大陸の中緯度地域や北アメリカの中部などが知られています。
日本列島へも冬鳥として飛来しますが、主に北海道に渡来するものの、その数はあまり多くありません。
本州では、冬の季節風が強く吹き付ける日本海側の北部地域で少数が観察される程度です。
また、稀ではありますが、九州や遠く離れた小笠原諸島でも記録された例があり、これは彼らの渡りのルートが多様である可能性を示唆しています。
近年、日本の沿岸部、特に海岸の砂丘や河口付近などで比較的多くの個体が見られるようになったという報告もあり、環境の変化や観察機会の増加などが要因として考えられます。

形態

ユキホオジロは、体長がおよそ16センチメートル程度の小型の鳥です。その姿は、季節や性別によって大きく変わります。

雄の夏羽: 繁殖期である夏の雄は、非常に鮮やかな白と黒のコントラストを示します。全身の大部分が純白色ですが、背中の一部、翼の最も外側の羽（初列風切羽）の先端、小さな翼（小翼羽）、そして尾羽の一部が黒色です。この夏羽は、ツンドラの景観の中で目立ち、求愛行動などに関わると考えられます。
雄の冬羽: 非繁殖期である冬の雄は、夏羽の黒色が褐色味を帯び、さらに額から首の後ろ（後頸）にかけてと、目の後ろにある耳羽の部分が褐色になります。全体的に夏羽ほど派手ではなくなり、冬の環境に溶け込みやすい色合いになります。
雌: 雌は一年を通して、雄に比べて全体的に褐色みが強い傾向があります。特に冬羽ではその差が顕著で、雄のような鮮やかな白と黒のコントラストはあまり見られません。これは、繁殖期に巣や雛を目立たせないための適応と考えられます。

生態

ユキホオジロは、海岸の砂丘、農耕地、荒地といった、開けた地表が露出した環境を好んで生息します。これらの場所では、植物の種子や地面を這う昆虫などを効率よく採餌することができます。

繁殖期以外の期間、特に越冬地では、数羽から数十羽程度の比較的小規模な群れを形成して行動することが多いです。これにより、集団で外敵を警戒したり、効率的に餌を探したりします。
しかし、渡りの時期になると、多くの個体が一箇所に集まり、数百羽、時には数千羽にも及ぶ非常に大きな群れを作り、壮大な光景となって移動することもあります。

保全状況

ユキホオジロは、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいて、「LEAST CONCERN（低危険種）」に分類されています（2001年評価）。これは、現時点では地球規模での絶滅の危機に瀕している可能性は低いと判断されていることを意味します。しかし、主要な繁殖地である北極圏の環境は、地球温暖化の影響を特に受けやすい地域の一つであり、長期的な気候変動が彼らの生息や繁殖に与える影響については、今後も注視していく必要があります。

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