ユナイテッド航空328便エンジン事故

ユナイテッド航空328便エンジン事故の詳細

2021年2月20日、ユナイテッド航空328便（ボーイング777-200型機）がデンバー国際空港を離陸直後、右エンジンが故障し緊急着陸しました。この事故でエンジンの部品が広範囲に落下しましたが、幸いにも死傷者は出ませんでした。この事故は、同型機の運用停止やエンジン検査強化へとつながる重要な出来事となりました。

事故の経緯

ユナイテッド航空328便は、デンバー国際空港を13時04分に離陸後、約4分後の上昇中に右エンジンが故障しました。エンジンカウルの一部が崩壊し、破片がコロラド州ブルームフィールドの住宅街に落下しました。幸い、機内や地上にいた人に怪我はありませんでしたが、落下した破片は家屋や車両に損傷を与えました。パイロットは直ちに緊急事態を宣言し、13時28分にデンバー国際空港に無事着陸しました。総飛行時間は24分でした。

事故後、乗客は別の便に振り替えられ、数時間後にホノルルへ出発しました。

事故機について

事故を起こした機体は、ボーイング777-200型機（機体番号：N772UA）で、1995年にユナイテッド航空に納入された機齢約26年の機体でした。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー（P&W）PW4000シリーズのPW4077が搭載されていました。事故当日、同機はシカゴ・オヘア空港からデンバーに到着後、ホノルルへ向かう予定でした。

エンジンについて

ボーイング777は長距離路線に使用される大型機で、搭載されるPW4000エンジンは、高い推力を持つターボファンエンジンです。特にPW4077は、直径約280cmのファンセクションを持ち、22個の中空コアファンブレードを使用しています。FAAは、このエンジンを搭載した航空機に対し、ファンブレードの緊急検査を指示しました。

過去の同型機・同型エンジン事故

今回の事故以前にも、同型機や同型エンジンを搭載した航空機で同様の事故が複数発生しています。

ユナイテッド航空1175便（2018年）： サンフランシスコ発ホノルル行きの便で、エンジンカウルが脱落する事故が発生。同型機（ボーイング777-200）で、金属疲労によるファンブレードの破損が原因とされました。
日本航空904便（2020年）： 那覇発羽田行きの便で、ファンブレードが破断しエンジン部品が脱落する事故が発生。金属疲労が原因とされました。
ロングテール・アヴィエーション5504便（2021年）： ボーイング747型機でエンジン部品が脱落する事故が発生。この事故では、負傷者が出ました。使用されていたエンジンはPW4000シリーズの初期型でした。

これらの過去の事故は、今回のユナイテッド航空328便の事故原因を調査する上で重要な参考となりました。

事故調査

アメリカ国家[[運輸安全委員会]]（NTSB）が事故調査を担当しました。初期調査では、エンジンの吸気口とカウリングが分離し、2つのファンブレードが破損していることが判明しました。特に1つのブレードの一部が封じ込めリングに埋め込まれていました。NTSBは、ファンブレードの損傷が金属疲労によるものである可能性を示唆し、詳細な調査のため、破損したブレードをP&Wの研究所に送りました。

事故の影響

事故発生後、警察は、落下した破片に触れないように住民に注意喚起しました。P&Wは、連邦捜査機関と協力し、PW4000エンジンの検査間隔の見直しを始めました。

同型エンジン搭載機の運航停止

FAAは、PW4000エンジンを搭載したボーイング777型機の検査を強化するよう命じました。日本を含む各国の航空当局も、同型機の運航停止を指示しました。

国土交通省航空局（日本）： 日本航空と全日本空輸が運航する32機のボーイング777型機の運航を停止。
イギリス民間航空局： PW4000-112エンジンを搭載したボーイング777型機のイギリス空域への進入を禁止。
FAA（アメリカ）： 特定のP&W PW4000エンジンを搭載した航空機のファンブレードを熱音響イメージングで検査することを義務化し、ユナイテッド航空の同型機の運航停止を維持。

ボーイングも、PW4000-112エンジンを搭載したボーイング777型機の全世界的な運航停止を推奨しました。

運航再開

各航空会社は、エンジン検査や改修を行った後、ボーイング777型機の運航を再開しました。日本航空は運航停止中の同型機を退役させましたが、全日空は再発防止策を実施した上で運航を再開しました。
ユナイテッド航空も運航再開許可を取得し、事故当該機N772UAも運用に復帰しています。

まとめ

ユナイテッド航空328便のエンジン事故は、航空機の安全運航におけるエンジン部品の重要性を再認識させる出来事でした。過去の同型機や同型エンジンにおける事故の教訓を活かし、より安全な空の旅が実現することを願います。

関連情報

時論・公論『B777 相次いだエンジン損傷 求められる再発防止』 - NHKによる解説番組
関連項目： 他の航空機エンジン事故に関する記事へのリンク

もう一度検索