ユニティ・ヴァルキリー・ミットフォード

ユニティ・ヴァルキリー・ミットフォード閣下とは

ユニティ・ヴァルキリー・ミットフォード閣下（The Hon. Unity Valkyrie Mitford, 1914年8月8日 - 1948年5月28日）は、イギリスの貴族令嬢であり、女性ファシズム運動家として知られています。ミットフォード姉妹の一人であり、アドルフ・ヒトラーを取り巻く女性の一人としても有名です。

生涯

出生

ユニティは、後に第2代リーズデイル男爵となるデイヴィッド・フリーマン＝ミットフォードとその妻シドニーの五女として、ロンドンで生まれました。父デイヴィッドは、日本とも縁の深い初代リーズデイル男爵の次男でした。母シドニーは庶民院議員の娘でした。

ユニティには、長姉ナンシー、次姉パメラ、兄トーマス、三姉ダイアナがいました。また、妹ジェシカとデボラもいました。

ファーストネームの「ユニティ」は母シドニーが好きな女優に、ミドルネームの「ヴァルキリー」は祖父が名付けたもので、ワーグナーのオペラに登場する女神に由来します。家族からは「ボボ」という愛称で呼ばれていました。

幼少期・少女期

1919年、ミットフォード家はアストホール邸に移住しました。ユニティは、癇癪持ちの父と独特な価値観を持つ母のもと、特殊な環境で育ちました。姉妹の中でも特にいたずら好きで、寄宿学校に入れられたこともありましたが、すぐに飛び出してしまったそうです。

ユニティは妹のジェシカと仲が良く、「バウドルディッジ語」という専用の言語で会話をしていました。しかし、やがてユニティはファシズム、ジェシカは共産主義に傾倒し、イデオロギー対立をするようになりました。

社交界デビュー

1932年春、ユニティは社交界にデビューしました。長身でブロンドの美しい女性として注目されましたが、いたずら好きは変わらず、奇抜な行動で人々を驚かせました。ペットの白ネズミや蛇を連れてきて騒ぎを起こしたり、国王に罵声を浴びせたりと、数々のエピソードを残しています。

英国ファシストへ

1933年、姉ダイアナから紹介されたオズワルド・モズレーの思想に共鳴し、英国ファシスト連合(BUF)に加入しました。ユニティはダイアナとともにドイツへ渡り、ニュルンベルク党大会に参加しました。そこでアドルフ・ヒトラーとの面会を試みましたが、実現しませんでした。

ヒトラーとの出会い

1934年春、ユニティはドイツに留学し、ミュンヘンで語学学校に入学しました。ヒトラーがよく訪れていたレストランで、毎日のように食事をとり、彼に会える機会を待ちました。1935年2月9日、ついにヒトラーのテーブルに招かれ、30分間会話をしました。この出会いが、彼女の人生を大きく変えることになります。

ナチスとの交流

ヒトラーは、ユニティの貴族の出自、ファシズム思想、ワーグナーの熱狂的ファンという点、そして金髪碧眼の容姿に、英独を結び付ける象徴としての価値を見出しました。ユニティはナチ党幹部と親交を深め、党大会にも出席し、反ユダヤ主義を唱えました。しかし、その行動は英国の新聞で大きく報道され、両親から帰国を命じられました。

ヒトラーの側近くで

一時帰国後、再びミュンヘンに戻ったユニティは、ヒトラーの側近として行動するようになります。ヒトラーからは「キント（子供）」と呼ばれ、親密な関係を築きました。ユニティは、ヒトラーが愛人エーファ・ブラウンと関係を持っていることを知ると、嫉妬心を抱き、エーファの働く写真館に乗り込んだこともありました。

ユニティとヒトラーの結婚の噂も流れましたが、性的関係はなかったとされています。ヒトラーは、外国人女性との親密な関係を避けていたと言われています。

ナチス擁護活動

ユニティは、外国の報道機関に積極的に対応し、ヒトラーが善良で平和を望んでいると主張しました。また、オーストリア併合を歓迎し、親戚のチャーチルに手紙を送ったこともありました。ユニティの熱心な説得により、両親もナチスにシンパシーを感じるようになりました。

英独開戦阻止への努力

ドイツとイギリスの緊張が高まる中、ユニティはミュンヘンに永住することを決意しました。ユダヤ人から没収した家が与えられたことに対して、批判的な意見も出ています。開戦直前まで、英独同盟を訴え続けましたが、努力は実りませんでした。

英独開戦と自殺未遂

1939年9月3日、イギリスがドイツに宣戦布告すると、ユニティは絶望し、ミュンヘン市内の英国庭園で自殺を図りました。一命を取り留めたものの、脳に銃弾が残ったままとなり、言語中枢を損傷してしまいました。ヒトラーはユニティを見舞いましたが、数回にとどまったようです。

帰国

ユニティは治療のため、スイスを経由してイギリスへ帰国しました。イギリスでは、マスコミが彼女の自殺未遂をセンセーショナルに報道しました。ユニティは病院に入院しましたが、脳の損傷は回復せず、子供のような状態になっていました。その後、スコットランドの島へ移住し、静かに暮らしました。

死去

1948年春、ユニティは髄膜炎を発症し、スコットランドの病院で亡くなりました。死因は、頭の古傷の感染症による肺球菌性脳膜炎でした。彼女の死は、ミットフォード家にとって大きな悲しみでした。ユニティは生前、「戦争が始まるまでは、私ほど幸せな青春時代を送った人間はいないわ」と語っていたそうです。

家系図

（家系図は省略）

出典

参考文献

アンナ・マリア ジークムント 著、西上潔 訳『ナチスの女たち―第三帝国への飛翔』東洋書林、2009年。
エーリヒ・シャーケ 著、渡辺一男 訳『ヒトラーをめぐる女たち』阪急コミュニケーションズ、2002年。
メアリー・S. ラベル(en) 著、粟野真紀子、大城光子 訳『ミットフォード家の娘たち―英国貴族美しき六姉妹の物語』講談社、2005年。

関連項目

ミットフォード姉妹

外部リンク

* Somewhere In England 1940 - 自殺未遂後のユニィティがイギリスに帰国した様子を伝えるニュース映像

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