ユニバーシティ・カレッジ・コーク

ユニバーシティ・カレッジ・コーク（UCC）の概要

ユニバーシティ・カレッジ・コーク（University College Cork、UCC）は、アイルランドのコーク県に位置する国立大学であり、アイルランド国立大学（NUI）の構成大学の一つです。1845年にクイーンズ大学コーク校として創立され、1908年に現在の名称となりました。UCCは、アイルランド国内だけでなく、国際的にも高い評価を受けている研究型大学です。本稿では、以下UCCと表記します。

大学の歴史

UCCは、1845年にクイーンズ大学の3校の一つとして設立されました。当初はベルファスト、コーク、ゴールウェイに設置されました。1908年のアイルランド大学法に基づき、ユニバーシティ・カレッジ・コークとして再編されました。その後、1997年の大学法を経て、正式名称が現在の「ユニバーシティ・カレッジ・コーク - アイルランド国立大学コーク校」となりました。

大学の評価

UCCは、国際的な大学ランキングで常に上位にランクインしています。クアクアレリ・シモンズ（QS）の世界大学ランキング2021では、世界286位、ヨーロッパ121位、アイルランド国内では4位にランク付けされました。過去には2011年に世界181位を記録しています。また、タイムズ・ハイアー・エデュケーション（THE）の世界大学ランキング2021では、世界301～350位にランクインしています。サンデー・タイムズ紙による「アイリッシュ・ユニバーシティ・オブ・ザ・イヤー」には、過去5回選出されています。2015年には、欧州委員会のU-Multirankで、参加大学1200校の中で最高の評価を獲得しました。さらに、2011年にはエネルギー管理のISO50001規格を初めて取得した大学となりました。

入学試験

UCCの学士課程への出願は、中央出願局（CAO）を通じて行われます。CAOは、アイルランド、イギリス、EU圏からの出願を処理します。入学は学力に基づき、最低限の入学要件と各学部・コース固有の要件を満たす必要があります。医学部など一部の学部では、追加の試験が課されます。CAOは、アイルランドのリービング・サーティフィケートの結果に基づいて合否を決定しますが、イギリスのAレベル、フランスのバカロレア、国際バカロレアなどの資格も利用できます。EU圏外の学生には、別途の手続きが適用されます。大学院への入学は、UCCが直接担当します。

大学の沿革

クイーンズ・カレッジ・コークは、ヴィクトリア女王の時代に「アイルランドの学術振興」を目的として設立されました。1849年に開校し、医学部、芸術学部、法学部が設置されました。キャンパスは、コークの守護聖人である聖フィンバーに関連する場所に建てられました。大学のモットー「Where Finbarr Taught, Let Munster Learn（フィンバーが教えた場所、マンスターに学ばせる）」は、この歴史的なつながりを反映しています。

キャンパスの設計は、トーマス・ディーンとベンジャミン・ウッドワードが担当しました。初期のキャンパスは、テューダー・ゴシック様式の建築が特徴です。その後、メディカル・ウィンドル棟などが追加され、発展を遂げました。

アイルランド国立大学との関係

20世紀初頭、1908年のアイルランド大学法により、UCCはアイルランド国立大学の構成大学として認められました。1997年の大学法によって、学位授与権を除き、UCCは独立した大学となりました。

キャンパスの拡張

学生数の増加に伴い、UCCはキャンパスを拡張してきました。1990年代後半には、アルフレッド・オライリー棟、キャヴァナ薬学棟、ブルックフィールド健康科学センターなどが建設されました。2000年代には、ルイス・グラックスマン・ギャラリー、ウエスタン・ゲートウェイ棟、ブール図書館の拡張などが行われました。2016年には、コーク貯蓄銀行の建物を購入し、キャンパススペースの拡大を継続しています。2017年以降は、学生ハブの設置、学生寮の増築、屋外スポーツ施設の開発など、さらなるキャンパス拡充計画が進められています。

2006年には、クロフォード天文台が改修され、歴史的な望遠鏡が修復されました。2009年には、UCCの多くの建物が洪水被害を受けましたが、その後復旧しました。2018年には、生物科学棟にアイルランド初の「プラスチックフリー」カフェがオープンしました。

大学の構成

2020年現在、UCCは以下の学部・研究科で構成されています。

学部
芸術・ケルト学・社会科学部
経営法学部
理工学・食品科学部
医療保健学部
研究科
芸術・ケルト学・社会科学研究科
経営法学研究科
理工学・食品科学研究科
医療保健研究科

教育と研究

UCCは、アイルランドを代表する研究機関の一つです。2016年には、過去最高の研究資金9,600万ユーロ以上を確保しました。大学は、研究とイノベーションの強化を目標としており、研究分野で世界のトップ3％にランクインしています。UCCの研究センターは、ナノエレクトロニクス、食と健康、環境など、様々な分野で卓越した研究を行っています。また、UCCは、アイルランドで初めて胚性幹細胞研究を承認した機関の一つです。

入学試験の詳細

UCCへの入学は、学力に基づいて行われます。最低限の入学要件に加え、学部・学科ごとに異なる入学要件が存在します。例えば、理系学部では、特定の科学科目の成績が求められます。アイルランドのリービング・サーティフィケートでは、高レベル（Higher Level）と普通レベル（Ordinary Level）があり、入学条件にレベルが指定されることがあります。また、総合点数だけでなく、一部の学部では別の入学試験（例：HPAT）が課されます。合格発表は、CAOによって毎年8月中旬に行われます。EU圏外からの入学者は、各国ごとの高校卒業資格に応じて入学要件が異なります。大学院への入学は、学士の成績と英語力が考慮されます。

学生生活

UCCでは、100以上のサークルと50以上のスポーツクラブが活動しています。学生組合（UCCSU）は、約17,000名の学生を代表する組織です。UCCは、キャッスルホワイト・アパート、マーダイク・ホールなど、5つの学生寮を運営しています。留学生の受け入れも積極的に行っており、アメリカ、中国、フランスなど、世界各国から学生が集まっています。

国際交流

UCCは、エラスムス計画に参加しており、多くの学生が海外の大学に留学しています。2020年現在、UCCは日本の東京外国語大学、龍谷大学、早稲田大学と学術交流協定を締結しています。

主な卒業生

UCCは、俳優のフィオナ・ショウ、キリアン・マーフィー（中退）、作曲家のアロイス・フレイシュマンなど、多くの著名人を輩出しています。

まとめ

ユニバーシティ・カレッジ・コークは、アイルランドを代表する国立大学として、長い歴史と伝統を持ちながら、常に最先端の研究と教育を提供しています。国際的な連携も積極的に行い、多岐にわたる分野で活躍する人材を育成しています。

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