ユニー航空873便火災事故

ユニー航空873便火災事故は、1999年 8月24日に発生した航空事故です。台北松山空港から花蓮空港へ向かっていたユニー航空873便（マクドネル・ダグラス MD-90-30）が、花蓮空港への着陸時に機内で爆発し、火災が発生しました。この事故により、乗員乗客96名のうち1名が死亡、27名が負傷しました。この事故は、MD-90型機およびユニー航空において唯一の死亡事故となっています。

事故機の詳細

事故を起こした機体、マクドネル・ダグラス MD-90-30（B-17912）は、1996年に初飛行し、事故当時までに4,929時間の総飛行時間と7,736回の離着陸を経験していました。

乗務員

機長: 41歳の男性。HS-748とMD-90の操縦資格を保有。総飛行時間6,532時間（うちMD-90は1,205時間）。
副操縦士: 35歳の男性。ボーイング747、ボーイング767、MD-90の操縦資格を保有。総飛行時間5,167時間（うちMD-90は96時間）。

事故の経緯

873便は台北松山空港を現地時間12時16分に離陸し、12時21分に巡航高度3,000メートルに到達しました。飛行時間は約20分の予定で、花蓮空港には12時35分に到着する予定でした。12時30分、パイロットは管制官に空港を視認したことを伝え、管制官は滑走路21への着陸を許可しました。

12時36分、873便は着陸。着陸からわずか26秒後、客室左側前方で爆発が発生しました。爆発により黒煙が立ち上り、荷物や機体の一部が滑走路上に散乱しました。パイロットはブレーキをかけ、機体は滑走路終端から約1,900メートル地点で停止。パイロットは管制官に緊急事態と火災の発生を報告し、空港の消防隊が現場に急行しました。緊急脱出が開始されましたが、激しい火災のため機体前方からの避難は困難となり、乗員乗客は機体後部から脱出しました。消防隊は事故発生から8分ほどで到着、救急車は30分ほどで到着しました。機体は激しく燃え、火災が鎮火したのは13時45分でした。

事故による被害

機体上部は爆発と火災により完全に焼け落ちました。爆発により飛散した残骸の一部は左エンジン内でも発見されました。

この事故により、乗員乗客28名が負傷しました。重傷者は14名、軽傷者も14名。負傷者のほとんどは火傷によるもので、1名のみが爆発により飛散した残骸で怪我を負いました。

事故から47日後、座席7Bに座っていた乗客が死亡しました。この男性は、機内にガソリンを持ち込んだとされる元陸上競技選手、古金水の兄であり、事故により全身の45%に重度の火傷を負っていました。

事故調査

台湾の飛航安全調査委員会（ASC）が事故調査を実施しました。当初は、事件と事故の両面から調査が行われました。目撃者の証言によると、機体の左側前方、3番目の窓の上部に穴が開いており、そこから黒煙が吹き出していたとのことです。

コックピットボイスレコーダー（CVR）とフライトデータレコーダー（FDR）の解析

CVRとFDRは現場から回収され、両方ともほぼ無傷でデータも問題なく取り出すことができました。記録によれば、爆発は12時36分32秒に発生しており、その2秒後にCVRは記録を停止しました。FDRもCVRに爆発音が録音された12時36分32秒に記録を停止しており、これは客室で発生した爆発と火災により、機体の電気系統が機能を喪失したためと見られています。

残骸の調査

事故後の火災により、機内はほとんど焼け落ちていました。爆発は、胴体前方左側の5-7列目の座席付近で発生したと推定されました。また、上部の損傷が激しいことから、ASCは爆発が3-7列目の上部に設置された収納棚で発生したと考えました。

しかし、7Cの座席付近および滑走路上で漂白剤のボトルが発見され、ボトル内部を調査したところ、ガソリンの成分が検出されました。他にも5Cの座席付近からオートバイ用のバッテリーが発見されました。このバッテリーの導線は滑走路上で発見されました。

ボトルの検査結果から、ASCはボトルにはガソリンが入っており、容器は接着剤によって密閉されていたと推測しました。また、このボトルからガソリンが漏れて気化し、バッテリーのアーク放電による火花によって引火した可能性が考えられました。

事故原因

2000年11月に最終報告書が発行されました。報告書では事故原因は機内に持ち込まれたガソリンとバッテリーであると結論付けられました。漂白剤と柔軟剤のボトルに入れられたガソリンは飛行中に漏れ出て、収納棚に充満しました。加えて、着陸時の衝撃でバイクのバッテリー内の鉛蓄電池がアーク放電を起こし、ガソリンが発火しました。

また、事故原因に寄与したとして、以下の点が挙げられました。

台湾の民間航空局の規則には、爆発物についての取り扱いについて詳細な規定がなかった。
空港検査官のトレーニングおよび評価が適切に行われていなかった。
一部の検査官は適切な訓練を受けておらず、別の検査官の指示に従って仕事をしていた。そのため、危険物の発見を自発的にすることができなかった。

これらの要因が重なり、持ち込みが禁止されているバッテリーおよびボトルに入ったガソリンの持ち込みを許してしまったと考えられます。

刑事裁判

ガソリンの入ったボトルは、元陸上競技選手の古金水が兄の古金池に持ち込ませたものであると結論付けられました。しかし、古金水はボトルの中身は柔軟剤と漂白剤であったと主張しました。裁判の結果、古金水は懲役10年の有罪判決を受けましたが、判決を不服として控訴しました。その結果、2002年5月28日の裁判で懲役が7年半に短縮されました。

2004年12月27日、5回の再審を経て時間切れ（台湾は法律で長期の裁判を禁止している）で推定無罪が確定しました。裁判官は、実験が事故時の状況と異なる環境で行われており、主張を裏付ける十分な証拠にはならないと判断しました。

映像化

メーデー!:航空機事故の真実と真相第18シーズン第3話「Explosive Touchdown」

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