ユノハマサラグモ

ユノハマサラグモ (Turinyphia yunohamensis)

ユノハマサラグモは、サラグモ科に分類されるクモの一種です。同科の中では比較的大きな網を張ることで知られています。

特徴

体長: 雌は4.1mmから5.4mm程度で、雄はこれより小型です。
頭胸部: 雌の頭胸部は明るい赤褐色で、中央には縦に黒い斑紋があります。
歩脚: 歩脚は緑色を帯びた赤褐色です。
腹部: 雌の腹部は卵形で、地色は白色です。中央には縦長の黒い斑紋があり、両側面にも縦に続く黒斑とそれに沿った黄斑があります。
雄: 雄は雌に比べて細身で、斑紋は雌に似ていますが不明瞭です。触肢器官が小さく、この点で他種と区別することができます。

分布と生息環境

ユノハマサラグモは、本州、四国、九州に分布しており、国外では韓国と中国にも生息しています。里山から山地にかけて見られ、平地での発見は少ないとされています。主に森林の周辺や林道、渓流沿いの樹木の枝の間、草の間などで生息しています。ただし、浅間他(2001)によれば、平地で全く見られないわけではなく、学校の校庭でも観察されることがあると報告されています。

生態

ユノハマサラグモは造網性のクモで、伏せ皿型の皿網を張ります。この網のシート部分は直径10cmから30cm、深さは1cmから5cm程度で、このタイプの網としては比較的大きい方です。クモは皿の中央下面に位置し、獲物が網にかかるとシート面の下から噛み付いて捕獲し、糸をかけてドームの中央で捕食します。

成体は初夏に見られますが、特に雄の成体が見られる期間は短く、10日前後しか観察されないことがあります。

分類・類似種

ユノハマサラグモは、同属のクモとしては日本では1種のみが知られています。しかし、類似の種はいくつか存在します。特に伏せ皿型の皿網を張り、腹部が白地に黒斑を持つものとしては、アシナガサラグモ、シロブチサラグモ、タイリクサラグモなどが挙げられます。これらの種はよく似ていますが、背面の斑紋のパターンによってある程度区別することが可能です。

和名について

ユノハマサラグモという和名は、学名の種小名であるyunohamensisに由来しています。この種小名は、本来「ユノハマ（湯ノ原）産の」という意味ですが、この種のタイプ産地は佐賀県の湯ノ原（佐賀郡富士町）であるにも関わらず、新種記載時に誤って記載されました。そのため、和名はその誤りをそのまま引き継いでしまった形になっています。

出典

参考文献
小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
新海栄一、『日本のクモ』,(2006),文一総合出版
* 浅間茂他、『野外観察ハンドブック　改訂校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』、(2001)、全国農村教育協会

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