ユノミネシダ

ユノミネシダ (Histiopteris incisa)について

ユノミネシダは、1875年に初めて記載されたコバノイシカグマ科に属するシダの一種で、主に熱帯や亜熱帯地域に分布しています。日本では特に貴重な存在であり、全国的に分布するわけではなく、特定の環境に見られる植物です。ここでは、ユノミネシダの特徴や分類、分布について詳しく見ていきましょう。

特徴

ユノミネシダは常緑性の多年生草本として知られています。その根茎は長く横に伸び、太さは1cmを超えることもあります。独特の暗紫色の光沢を持ち、幅の狭い鱗片に覆われています。葉は間を置いて出現し、葉柄も太く、場合によってはその直径が1.5cmを超えることもあります。このシダの葉は基部から外へ向かって脇芽を伸ばし、葉の先端で成長が続くため、成長は止まらず日本国内では最大2mに達することがありますが、熱帯地方ではその長さが10mに達することもあります。

葉全体の構造は通常2回羽状から、時には4回羽状になることがあります。羽片と小羽片は対生しており、羽片の基部にある最下の1対の小羽片は、柄がない托葉状となっています。羽片の大きさは70cmの長さ、30cmの幅に達する例があり、小羽片も20cmや7cmのサイズになります。葉の質感は草質で、表面は鮮やかな緑色、裏面は灰緑色をしています。葉の縁は裏面に向かって巻くような形状になります。また、裂片の形状は多様で、胞子嚢群は裂片の縁に沿って長く伸びることが一般的です。

分類

ユノミネシダ属に認められているのはユノミネシダ (H. incisa) のみですが、他にも未分類の種がいくつか存在します。このシダの英名は「Batwing fern」と呼ばれ、その形状に由来していると考えられます。

分布

ユノミネシダは、アジアやオーストラリア、アフリカ、南アメリカ、また各大洋島の熱帯から亜熱帯地域に広く分布しています。日本においては、主に鉱山跡や温泉地といった特異な環境で見られます。具体的には、1887年に和歌山県の湯の峰温泉で初めて発見され、ここはこのシダの分布域の北限とされています。この自生地は1928年に「ユノミネシダ自生地」として国の天然記念物に指定され、厳重に保護されています。

参考文献

• - 岩槻邦男編、『日本の野生植物　シダ』、(1992)、平凡社
• - 光田重光、『しだの図鑑』、(1986)、保育社

このように、ユノミネシダは特異な環境でのみ見られる大変貴重な植物であり、その成長や形状、分布の特性からも興味深い存在といえるでしょう。

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