ユビキタス

ユビキタスとは

ユビキタス（ubiquitous）とは、ラテン語の「ubique」（どこにでも）に由来する言葉で、日本語では「遍在」と訳されます。これは、あるものが時間や場所を問わず、あらゆる場所に存在するという概念を表します。宗教的な文脈と情報技術の分野で使われることが多い言葉です。

宗教における遍在

宗教においては、特に一神教において神の遍在性を指す言葉として用いられます。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などでは、神は宇宙とは別の存在でありながら、あらゆる場所に存在すると考えられています。汎神論では、神と宇宙は同一視され、万有内在神論では、神は宇宙に浸透しつつも、時間と空間を超越した存在であるとされます。

旧約聖書や知恵文学には、神が顕在的に存在したり、被造物全体のあらゆる状況の中に存在したりすることが記述されています。また、キリスト教では、神はイエス・キリストの受肉を通して身体的に存在するとも考えられています。

ドミニク・マルバニヤンは、遍在とは神がすべての空間を占有したり、空間に分布したりすることではなく、神がどこにでも完全に存在し、異なる場所で同時に異なる働きをすることができる状態であると指摘しています。

用語の起源

「ユビキタス」という言葉は、英語の「ubiquitous」に由来し、さらにその語源はラテン語の「ubique」に遡ります。このラテン語は、宗教的な文脈で神の遍在を表現するために用いられていました。元々は疑問詞「ubi（どこ？）」に接尾辞「-que（〜も、〜も）」が付いたもので、「どこでも」という意味を表します。

情報技術におけるユビキタス

1991年、パロアルト研究所のマーク・ワイザーが論文『The Computer for the 21st Century』の中で、コンピュータやネットワークが社会の隅々まで浸透し、いつでもどこでも利用できる状態を表す言葉として「ユビキタス」を用いました。この概念が広まり、「ユビキタスコンピューティング」「ユビキタスネットワーク」といった言葉が生まれ、さらにそれらが普及した社会を「ユビキタス社会」と呼ぶようになりました。

現在では、情報技術が日常生活に溶け込み、意識することなく利用できる状態がユビキタスの概念として広く認識されています。

まとめ

ユビキタスという言葉は、宗教的な神の遍在性から、情報技術におけるネットワークの普及まで、幅広い意味合いを持つ言葉です。その根底には、あらゆる場所に存在するという概念があり、今後も様々な分野でこの言葉が用いられると考えられます。

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