ユリスナルダン

ユリス・ナルダン：革新と伝統が織りなす高級時計の世界

ユリス・ナルダン（Ulysse Nardin）は、スイスを代表する高級時計メーカーとして、1846年の創業以来、革新的な技術と伝統的な職人技を融合させた時計を製造し続けています。創業から現在に至るまでの歴史、代表的なモデル、そしてその魅力に迫ります。

創業と初期の成功

ユリス・ナルダンは、時計職人であった父レオナール・フレデリック・ナルダンから技術を学び、マリン・クロノメーター製作や天文時計製作の専門家であったフレデリック・ウィリアム・デュボア、ルイ・ジャンリシャールにも師事しました。そして1846年、ル・ロックルに自身の工房を設立。1862年のロンドン万国博覧会で金賞を受賞するなど、創業初期からその技術力の高さが認められました。

創業者の死後、息子のポール・ダヴィド・ナルダンが後を継ぎ、ユリス・ナルダンはマリン・クロノメーターの分野でほぼ独占的な地位を確立。50カ国以上の海軍に製品を納入し、その名は世界中に知れ渡りました。日本海軍にも多数のクロノメーターが納入されており、戦艦三笠に搭載されていたクロノメーターは、現在も記念艦「三笠」で見ることができます。

天文三部作による復活

しかし、腕時計への移行の遅れやクォーツショックの影響を受け、ユリス・ナルダンは一時苦境に立たされます。1983年、投資家のロルフ・W・シュナイダーがユリス・ナルダンを買収し、ルートヴィヒ・エクスリン博士との出会いをきっかけに、高級複雑時計メーカーとしての再出発を果たします。

エクスリン博士による「天文三部作」は、ユリス・ナルダンの復活を象徴するコレクションです。

アストロラビウム・ガリレオガリレイ (1985年)：太陽や月の位置、日食・月食など、144,000年分の天文情報を表示する複雑機構を備えたモデル。「世界一複雑な腕時計」としてギネスブックにも掲載されました。
プラネタリウム・コペルニクス (1988年)：太陽系の動きを文字盤上で再現したモデル。各惑星の公転周期を忠実に再現し、天文学的な正確さを誇ります。
テリリウム・ヨハネスケプラー (1992年)：地球儀を中心に、昼夜の区別や月食・日食を表示するモデル。七宝で描かれた地球の美しさも魅力です。

革新的な技術と自社製ムーブメントの開発

2001年、ユリス・ナルダンはシリコン製脱進機を用いた「フリーク」を発表。このモデルは、トゥールビヨンを応用し、ムーブメント自体が回転して分針として機能するという革新的なデザインで、時計業界に大きな衝撃を与えました。また、「ETA2010年問題」を機に自社製ムーブメントの開発に着手し、2006年には初の自社製キャリバーCal.UN-160を発表。その後も、シリコン製部品を用いたCal.UN-118を搭載した「マリーン クロノメーター・マニュファクチュール」など、革新的なムーブメントを開発し続けています。

現在と未来

2011年にシュナイダーが亡くなった後、夫人のチャイが代表取締役に就任しましたが、2014年にはケリングが株式を100%取得し、ユリス・ナルダンはジラール・ペルゴなどを擁するソーウィンドグループの傘下となりました。2022年にはマネジメント・バイアウトにより再び独立を果たし、現在に至ります。

ユリス・ナルダンは、常に革新的な技術とデザインを追求し、高級時計の世界に新たな風を吹き込んできました。その歴史と伝統を受け継ぎながら、これからも魅力的な時計を創造し続けることでしょう。

外部リンク

ユリスナルダン公式サイト（英語）
ユリス・ナルダン - 天賞堂
常に先を行く ユリス・ナルダンの最新成果 - クロノス（2012年9月号）

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