ユーグレナモルファ

ユーグレナモルファ（Euglenamorpha）は、単細胞の鞭毛虫に分類される原生生物です。特に、カエルの幼生であるオタマジャクシの腸内という、特異な環境に生息することで知られています。この属には現在、Euglenamorpha hegeneri（ユーグレナモルファ・ヘゲネリ）というただ1つの種のみが確認されています。その姿は一般的なミドリムシ属（Euglena）に類似していますが、前端から3本の鞭毛を持つ点が大きく異なっており、この特徴からミドリムシ目（Euglenida）の中に独立したユーグレナモルファ亜目（Euglenamorphina）が設けられています。

この生物は1924年に初めて記載されて以来、発見報告が非常に少なく、その生態や生活環には未解明な点が多く残されています。当初の報告は主に北米からでしたが、近年になってバングラデシュからの報告例もあり、その分布域が広がる可能性も示されています。

形態的特徴

ユーグレナモルファには、主に2つの明確な形態変異型が存在します。これらは見た目が大きく異なるため、当初は別種と考えられたほどですが、研究の結果、相互に転換しうる同じ生物の異なる段階であると推測されています。

1. 緑色の基準型:
細胞は通常、円筒形から葉巻型で、前後に向かって次第に細くなりますが、特に後端がより細長く尖る傾向があります。
細胞の長さは30〜55マイクロメートル（平均約45マイクロメートル）、幅は4〜8マイクロメートル（平均約5.5マイクロメートル）です。
細胞の前端からは3本の鞭毛が伸長し、その長さは細胞長の半分から3分の2程度で、3本ともほぼ同じ長さを持っています。これらの鞭毛の基部には特徴的な錘状の膨らみが見られ、その近くに赤い眼点が存在します。3本の鞭毛のうち1本は、ミドリムシ類に典型的な片羽型（扁平な毛状突起を持つ）であることが確認されています。
細胞内部には、多数の緑色の葉緑体と、ミドリムシ類に特有の貯蔵物質であるパラミロンの顆粒が含まれています。葉緑体は円盤状で細胞の外周近くに分布し、互いに密接して細胞全体が緑色に見えるほど存在することが多く、その数は10数個から30数個に及びます。
核は比較的小さくまとまっており、細胞の中央よりやや後方に位置するのが典型的です。
細胞表面には、螺旋状の細かい線条が見られます。

2. 透明な型:
細胞は細長い円錐形で、最も幅が広い部分は前端の近くにあり、そこから後方に向かって徐々に細くなっていきます。
大きさは緑色の基準型とほぼ同等か、わずかに小さい傾向があります。
細胞の色は無色透明であるか、ごくわずかに緑色を帯びる場合があります。
鞭毛の数は不定で、多くの場合4本または6本ですが、2本、3本、5本を持つ例も報告されています。緑色型とは異なり、鞭毛の基部に膨らみはありません。
眼点は存在しません。
核は細胞の幅ほどに大きく膨らみ、染色体構造が観察されることがあります。
細胞表面の線条は確認できない場合もありますが、存在する場合は緑色型と逆向きの螺旋を描いています。

生活環と活動

これら2つの形態型は相互に変換すると考えられており、特に透明な型で活発な細胞分裂が観察されています。培養条件下での観察では、緑色の基準型が分裂を経て休眠状態に入る様子が捉えられており、これはオタマジャクシの体内から外部環境へ出てシスト（耐久性のある休眠芽胞）となり、新たな宿主への感染源となる可能性が示唆されています。

ユーグレナモルファは非常に活発に運動し、ミドリムシ類に見られるように細胞の形状をダイナミックに変形させながら泳ぎ回ります。原記載者であるWenrichは、その運動が他のミドリムシ類と比較しても特に急速であると記述しています。オタマジャクシの腸内では、腸壁に沿ったり、内容物の顆粒の間を縫うように素早く移動しており、希釈された食塩水のような外部環境に出すと、その運動速度はさらに増すことが報告されています。

栄養摂取と生息環境

ユーグレナモルファの培養は一般的に困難とされていますが、限定的な条件下での培養によって増殖が確認された例もあります。緑色の基準型は葉緑体を持つため、適切な塩分濃度を含む培地で光合成によって生育できると考えられています。一方、無色の変異型については、腸内の環境から栄養分を吸収する、いわゆる腐性吸収型であると推定されています。

この鞭毛虫は、特定のカエルやヒキガエルのオタマジャクシの腸、特に直腸部分から発見されています。これまでに宿主として報告されているカエル類には、ウシガエルや、いくつかのRana属（アカガエル科）、そしてハイイロアマガエル（アマガエル科）が含まれます。また、ヒキガエル科のBufo boreas*のオタマジャクシからも発見例があります。これらの宿主報告は主に北米からのものですが、例外的にバングラデシュではカエル体内ではなく水槽中から見つかった報告例もあります。現在のところ、日本からの発見例は確認されていません。

ユーグレナモルファは、その独特な鞭毛の数や、宿主の消化管内で見せる形態の多様性など、ミドリムシ類の中でも特異な存在です。その生態や生活環の全容解明には、さらなる研究が期待されます。

される希少な原生生物と言えるでしょう。

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