ユーゴスラビア侵攻

ユーゴスラビア侵攻（1941年）

ユーゴスラビア侵攻は1941年4月6日から4月17日までの間、ドイツやイタリアを中心とする枢軸軍とユーゴスラビアとの間で行われた戦闘を指します。この戦争は、欧米では「4月戦争」として知られ、ドイツ軍は迅速な電撃戦を実施し、わずか10日ほどでユーゴスラビア全土を制圧しました。

背景

1940年10月、イタリアのムッソリーニがギリシャに侵攻した際、激しい抵抗に遭い、アルバニアまで押し戻されました。一方、ドイツのヒトラーは、枢軸国の威信を回復させる必要性を感じていました。特に、イギリス軍によるルーマニアの油田への攻撃を防ぐことが急務でした。これにより、ユーゴスラビアに日独伊三国同盟に参加するよう圧力をかけ、1941年3月25日にユーゴスラビアはこの圧力に屈しました。

しかし、これが反枢軸の動きに繋がり、3月27日にはセルビア人の陸軍士官たちによってクーデターが起こりました。この混乱の中、侵攻が開始されました。

戦闘の始まり

4月6日、枢軸軍は各方面から侵攻を開始し、ドイツ空軍はベオグラードへの爆撃を実施しました。ユーゴスラビアは複数の隣国から同時に攻撃を受け、わずか11日間で降伏することになりました。ユーゴスラビアはドイツ、ハンガリー、イタリア、ブルガリアによって分割され、クロアチア独立国が成立しました。

ユーゴスラビア軍の防御

第一次世界大戦後に形成されたユーゴスラビア軍は、現在の戦闘に必要な装備が不足していました。老朽化した武器が使用され、自動火器や対戦車・対空兵器が不足していました。また、自動車化部隊もなく、戦車も旧式のルノー FT-17のみでした。空軍も貧弱で、当時は416機を保有していましたが、新型は半数に過ぎませんでした。侵攻時、動員が不完全で、戦力は約120万人程度でした。

さらに、セルビア人とクロアチア人の間の政治的対立が、ユーゴスラビアの防御を大いに妨げていました。4月10日には、クロアチア人が反乱を起こし、ドイツ軍の進撃を助けました。実質的に内戦状態にあるユーゴスラビアに対して、ドイツ軍の侵攻は容易に行われました。

作戦の詳細

ベオグラード空襲

ドイツ空軍は、ユーゴスラビアに対する攻撃を開始し、首都ベオグラードを集中爆撃しました。爆撃機は約300機が投入され、15分おきに爆撃を繰り返しました。この攻撃により、約1,000人の市民が犠牲となりました。

爆撃の結果、ユーゴスラビア軍の指揮系統は大きな打撃を受け、コミュニケーションがほぼ遮断されました。これによって、ドイツ軍は爆撃後、全力で軍事目標への攻撃を進め、膨大な数の優位性を持つ対空装備を持たないユーゴスラビア軍に対し、迅速な制圧が可能となりました。

地上攻撃

数つの地上軍が異なる方向からベオグラードに進軍しました。第一装甲集団は4月8日にソフィアから進軍し、次第に前進してニシュ、そしてベオグラードへと近づいていきました。ドイツ軍の迅速な進撃により、ユーゴスラビア軍は著しく崩壊し、多くの捕虜が生まれました。

他の軍団も同時に進攻し、ユーゴスラビアは次々に追い詰められました。4月12日には、ベオグラードへの進攻が連続して行われ、最終的にはユーゴスラビア軍は抵抗を放棄せざるを得なくなりました。

ベオグラードの陥落

4月12日、ドイツ軍はほぼ同時にベオグラードに侵入し、政府が降伏する事態に至りました。この攻撃によって、ユーゴスラビアの政府機関は失われ、枢軸国による分割占領が始まりました。

結果

ユーゴスラビアの分割後、一部地域には傀儡政府が設立され、それぞれの地域はドイツ、イタリア、ハンガリーの占領下に置かれました。国王や政府は亡命を余儀なくされ、反抗勢力による活動が始まりました。これにより、最終的にユーゴスラビアの再建に向けた動きが生まれました。

バルバロッサ作戦の開始が遅れたことは、その後の戦局にも多大な影響を及ぼしました。このように、ユーゴスラビア侵攻は第二次世界大戦の重要な転換点となったのです。

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