ユーザー系

ユーザー系情報システム子会社とは

ユーザー系情報システム子会社とは、大企業の情報システム部門が分離・独立して設立された企業のことです。システム子会社、情報子会社とも呼ばれます。

これらの企業は、親会社やグループ全体の情報システム戦略を担い、情報技術（IT）に関するコンサルティングやシステムインテグレーションを提供します。ユーザー系IT企業は、日本独自の企業形態として知られ、欧米企業の本社IT部門に相当する役割を担っています。

概要

ユーザー系情報システム子会社は、狭義には親会社が100%出資する完全子会社であり、親会社やグループ企業のシステム構築を主な目的としています。親会社の情報システム部門が分離独立したり、情報システム機能が移管されたりするケースがあります。

広義には、ユーザー企業の関連会社として情報システム事業を行う企業を指すこともあります。ユーザー系と非ユーザー系の分類は曖昧であり、親会社の主事業がIT・SI以外の場合、一般的にユーザー系とされます。

歴史

1980年代には、システム部門の子会社化戦略（アウトソーシング）が流行し、多くのユーザー系IT企業が設立されました。これにより、以下の効果が期待されました。

経営管理体制の効率化
ITコストの徹底管理
独立した利益センターの設立
役職定年者への対応

当初、これらの企業は親会社に利益を還元するプロフィットセンターとしての役割が期待されましたが、多くはビジネスモデルの構築に失敗し、内販型の機能会社へと転換しました。

1990年代後半から2000年代初期には、大手SIerの資本参加や情報子会社の売却が外部委託（戦略的アウトソーシング）として流行しましたが、基幹システムに関するノウハウの流出が問題となりました。

その後、フルアウトソーシングからインソーシングへの流れが生まれ、外販部門の分社化や売却、本体IT部門への再吸収、金融系シンクタンクとの統合などが行われました。

近年では、本体IT部門に少数の企画部隊を残し、主工程を情報子会社に一括発注する企業が増えています。しかし、欧米では本体IT部門に大規模なエンジニア部隊を抱えるのが一般的です。そのため、ユーザー系情報子会社の存在意義は薄れてきており、親会社に対して対等な立場で助言・提言する新たな組織への再編が進んでいます。

また、金融業界を中心に、システム統合や共有化によるコスト削減を目的とした業界再編が加速しており、持株会社制への移行に伴い、複数の企業がシステムを共有するケースが増えています。合併の際には、ユーザー系情報子会社を統合し、持株会社の100%子会社として再編されるケースも増えています。

ユーザー系情報子会社のCEO（最高経営責任者）は、親会社のCIO（最高情報責任者）が兼任することが多く、情報技術だけでなく、技術革新を主導する企画・立案フェーズへの参画も求められています。

欧米企業は、従来通り内製を続けており、情報システム部門を分社化するケースは稀です。

ユーザー系IT企業の特徴

ユーザー系IT企業は、その事業形態によって以下の4つに分類されます。

1. コストセンター: 親会社やグループ会社に対するITサービス事業を提供します。グループ企業は重要な顧客ですが、グループ依存に陥るとIT投資額に左右されやすくなります。
2. プロフィットセンター: グループ外に対するITソリューション事業を行います。パッケージソフトウェアや情報機器の開発・販売、システムインテグレーターとしての活動を行います。他社との価格競争になるため、開発単価が低下する傾向があります。
3. サービスセンター: コンサルティング事業を提供します。プロフィットセンターが外販事業を強化するためにコンサルティング部隊を揃えたり、コストセンターがグループ内における情報戦略立案機能を強化したりするために、サービスセンターへと移行します。
4. シェアード・サービスセンター: グループ各社の間接部門業務を一括処理するシェアード・サービス事業を行います。グループ企業に対して、コンピュータセキュリティや内部統制システムの維持などを共有サービスとして提供することで、間接業務の効率化やコスト削減を図ります。

ユーザー系の分類

ユーザー系IT企業は、親会社の業界別に細分化されています。

製造系
非製造系
商社系
インフラ系
金融系
その他

ユーザー系IT企業を取り巻く環境

ユーザー系IT企業は、低利益率な企業体質であるため、M&Aの対象となるケースが増えています。ITベンダーにとって、ユーザー系IT企業の買収は、システム開発受注につながるため、積極的に行われています。

現状と課題

ユーザー系IT企業は、以下の3つの状況に分けることができます。

1. グループ企業から完全に独立している。
2. グループ企業を構成する中核企業となっている。
3. グループ企業のシステム子会社という立場にとどまり、ITベンダーの資本参加が行われている。

ユーザー企業は、情報戦略策定機能と情報システム構築機能を本社IT部門とユーザー系IT企業に分断しており、効率性を向上させるためには、垂直統合を行う必要があります。また、ユーザー系IT企業が利益重視に傾きITベンダーと同化してしまうことで、企業価値の低下を招いています。

ユーザー企業の施策

ユーザー企業は、以下のような施策を行っています。

親会社からの出向社員の転籍によるプロパー化
ユーザー系IT企業のプロフィットセンター化
ITベンダーとの資本提携
グループ内における情報システム会社の統合
シェアードサービスの実現

分社化のメリットとデメリット

メリット

エンドユーザーが主要事業に集中できる。
ユーザー系IT企業が情報システム事業会社であることを明確にできる。
給与体系や就労体系を独自に設定できる。

デメリット

エンドユーザー側のITスキルが低下した。
間接部門を切り離した経営指標の向上効果が連結で見た場合に反映されない。
子会社化対策に伴い、ユーザー系IT企業が有能なIT人材を確保できない。
ビジネスとシステム開発の連携性が損なわれる。
ユーザー系IT企業が売上確保のために不要なシステム開発を行う。
親会社に対してITガバナンスや内部統制を行うことが困難である。
コストセンターはコスト削減と利益追求のジレンマが生じる。

ユーザー系IT企業が抱える問題

ユーザー企業における情報システム予算の緊縮化
業務におけるユーザー企業と情報システム会社との“身内感覚”
ユーザー企業からのコストや納期に関する無理な要求
社長、役員、管理職社員等の重要ポストを占める親会社からの出向者
事業意識の欠落、間接部門意識の蔓延
* 得意な技術分野・コアコンピタンスの欠如

将来展望

ユーザー系IT企業は、設立当初の目的が薄れつつあり、親会社に対して対等な立場で助言・提言する新たな組織へと再編される傾向にあります。そのため、単なるグループ内システムインテグレーターではなく、ユーザー企業の業務支援を行うITパートナーとしての役割が求められています。

まとめ

ユーザー系情報システム子会社は、日本特有の企業形態であり、親会社の情報システム戦略において重要な役割を担っています。しかし、その存在意義や事業形態は変化しており、今後はより戦略的な役割を担うことが求められるでしょう。

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