ユージェニア・チャールズ

デイム・ユージェニア・チャールズ：カリブ海の鉄の女

デイム・ユージェニア・チャールズ（1919年5月15日 - 2005年9月6日）は、ドミニカ国の政治家であり、同国初の女性首相（1980年7月23日 - 1995年6月14日）を務めました。彼女はまた、ドミニカ国史上初の女性弁護士でもあります。その保守的で強気な姿勢から、「カリブの鉄の女」として知られ、イギリスのマーガレット・サッチャー首相と比較されることもありました。

生い立ちと教育

1919年、デイム・ユージェニア・チャールズは、セント・ルーク教区のポワント・ミシェルで生まれました。父ジョン・パブティストは石工から大地主となり、裕福な家庭で育ちました。彼女は教育熱心であり、1947年にカナダのトロント大学で法学士号を取得。その後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学修士号を取得しました。

政治家としてのキャリア

1968年、チャールズは政界入りし、保守政党であるドミニカ自由党（DFP）を共同で設立しました。彼女は初代党首としてドミニカの独立を強く支持し、1978年の独立後初となる1980年の総選挙でDFPを勝利に導き、首相に就任しました。

首相として、チャールズは社会福祉プログラムを開始し、経済政策を成功させることで国民からの支持を集めました。彼女は3期15年にわたり首相を務めましたが、これは女性首相としては、シェイク・ハシナ（バングラデシュ）、インディラ・ガンディー（インド）、シリマヴォ・バンダラナイケ（スリランカ）に次いで長い記録です。

チャールズは、汚職撲滅と民主主義、そして報道の自由を守るために断固たる姿勢で取り組みました。しかし、その姿勢は当初、周囲からの反発を招き、2度のクーデター未遂に直面しました。1度目は1981年のレッドドッグ作戦で、白人至上主義者によるものでしたが、未然に阻止されました。2度目はドミニカ国防軍兵士によるものでしたが、こちらも失敗に終わりました。

グレナダ侵攻

1983年のグレナダ侵攻は、チャールズの政治キャリアにおいて最も議論を呼んだ出来事の一つです。グレナダでは1979年にクーデターが発生し、人民革命政府が成立していましたが、1983年10月には政府内で再びクーデターが発生し、急進派が政権を掌握しました。チャールズは東カリブ諸国機構の緊急会合で民主主義の危機を訴え、グレナダへの侵攻をアメリカに要請。ロナルド・レーガン米大統領と共に侵攻を支持する演説を行い、アメリカ・東カリブ連合軍によるグレナダ侵攻を後押ししました。

政界引退と晩年

政権末期には支持率が低下し、1995年の総選挙で敗北したことを受けて政界を引退しました。2005年、フランスの病院で肺塞栓症により86歳で亡くなりました。生涯独身でした。

デイム・ユージェニア・チャールズは、ドミニカ国の発展に大きく貢献しただけでなく、カリブ海地域における女性の政治参加を促進した人物として、その名は歴史に刻まれています。

もう一度検索