ユーノー作戦

ユーノー作戦：第二次世界大戦におけるドイツ海軍の遠征

ユーノー作戦（Unternehmen Juno）は、1940年6月にドイツ軍が実行した海軍作戦です。この作戦の目的は、ノルウェーのナルヴィク地域で孤立していたドイツ軍部隊を支援することでした。しかし、作戦は当初の目標から逸脱し、結果として指揮官の更迭を招くことになりました。

作戦開始までの経緯

1940年4月、ドイツ軍はノルウェー各地への侵攻を開始しました。各地の占領は成功したものの、ナルヴィクではエドゥアルト・ディートルの部隊が連合国軍の攻撃によって孤立していました。連合国軍は5月28日にナルヴィクを占領し、ドイツ軍は増援部隊の輸送を計画しましたが、その計画は実現しませんでした。そこで、戦艦「グナイゼナウ」と「シャルンホルスト」を中心とする艦隊による作戦が立案されました。

ドイツ海軍総司令官エーリヒ・レーダー元帥は、ナルヴィクとハーシュタ地域の敵艦船を攻撃し、ディートル部隊を支援することを指令しました。艦隊を率いるヴィルヘルム・マルシャル中将には一定の裁量が認められていましたが、西部方面海軍司令長官アルフレート・ザールヴェヒター上級大将はハーシュタへの突入を命じました。さらに、ナルヴィクへ移動中の陸上部隊の支援も任務に追加されました。

マルシャルはレーダーとの会談で、ハーシュタ突入だけでなく周辺の水上目標への攻撃も可能であると解釈しました。

艦隊の出撃と戦略の変更

6月4日、戦艦「グナイゼナウ」（旗艦）、「シャルンホルスト」、駆逐艦4隻がキールを出撃し、途中で重巡洋艦「アドミラル・ヒッパー」が合流しました。6月7日、艦隊はハーシュタ沖に到達しました。夕方、マルシャルは艦隊内の上級士官を集め会議を開きました。その会議では、西航する敵部隊が確認されたため、イギリス軍が撤退中ではないかという意見が出されました。さらに夜になって届いたハーシュタの状況についての電文では、敵艦は1隻しかいなかったと報告されました。これらのことから、敵が撤退中であると考えたマルシャルは、ハーシュタ攻撃を中止し、敵船団を攻撃することにしました。

戦闘の経過

6月8日、マルシャルは船団攻撃に向かうことをザールヴェヒターに伝えたが、ザールヴェヒターはハーシュタへの突入を命じました。しかし、マルシャルはこれを無視し、午前中にノルウェータンカー「オイルパイオニア」とトローラー「ジュナイパー」を沈めました。その後、兵員輸送船「オラマ」と病院船「アトランティス」を発見し、「アドミラル・ヒッパー」と「ハンス・ロディ」が「オラマ」を撃沈しました。

敵を発見できなかったマルシャルは、空母が北方にいるとの情報に基づき、艦隊を北へ進めました。

空母グローリアス撃沈と作戦の中止

マルシャルは「アドミラル・ヒッパー」と駆逐艦をトロンハイムへ向かわせ、自身は戦艦2隻と共に北上しました。そこでイギリス空母「グローリアス」と護衛の駆逐艦「アカスタ」「アーデント」に遭遇し、3隻すべてを撃沈しました（ノルウェー沖海戦）。しかし、「シャルンホルスト」も「アカスタ」から発射された魚雷によって損傷し、作戦は中止されました。

「シャルンホルスト」は修理のためトロンハイムへ送られました。その後もマルシャルは「グナイゼナウ」と「アドミラル・ヒッパー」を率いて出撃しましたが、戦果を上げられず、6月20日に「グナイゼナウ」もイギリス潜水艦の雷撃により損傷しました。

作戦の結果と影響

マルシャルはハーシュタへ向かわなかったこと、「オイルパイオニア」と「オラマ」を撃沈したこと、「シャルンホルスト」を損傷させたことなどにより、レーダーから激しく非難されました。空母撃沈という戦果は評価されず、マルシャルは病気を理由に辞任し、後任にはギュンター・リュッチェンスが任命されました。

ユーノー作戦は、ドイツ海軍にとって戦略目標の逸脱や指揮系統の混乱、そして不十分な戦果という点で、大きな教訓を残す作戦となりました。しかし、戦術的な側面では空母を撃沈するという大きな成果も上げており、その後の海戦に影響を与えたといえるでしょう。

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