ユーリイ・アンネンコフ

ユーリイ・アンネンコフ（1889年7月23日 - 1974年7月12日）は、ロシア革命前後の激動期を生きた、多才な芸術家です。画家、舞台美術家、そして作家として、20世紀ロシアの文化に大きな足跡を残しました。作家活動においては「ボリス・テミリャーゼフ」という異名も用いました。父は作家のパーヴェル・アンネンコフです。

初期の生活と芸術への目覚め

アンネンコフはカムチャツカ半島のペトロパブロフスクで誕生しました。父パーヴェルは反ツァーリ運動に関与し、受刑中の身でした。サンクトペテルブルクでギムナジウムを卒業後、1907年からペテルブルク大学法学部に在籍する傍ら、シュティーグリッツ男爵が創設した美術学校にも通いました。1909年からはサヴェーリー・ザイデンベルクのアトリエで学び、同窓にはマルク・シャガールがいました。

1910年、国立美術アカデミーの教授ジャン・ツィオングリンスキーの指導を受け、彼の助言により1911年から1914年までパリで絵画の研鑽を積みました。この時期、フェリックス・ヴァロットンに師事し、シャガール、オシップ・ザッキン、モイズ・キスリングらと交流を深めました。1913年にはアンデパンダン展に初出品し、未来派やキュビスムといったヨーロッパ最先端の芸術運動を吸収しました。

ロシア革命と芸術活動

1914年にペテルブルクへ帰国したアンネンコフは、ミハイル・ラリオーノフやカジミール・マレーヴィチの影響を受けつつも、独自のスタイルを確立しました。画家、立体造形家、装飾家として才能を発揮すると同時に、ユーモア雑誌『サチリコン』に寄稿し、作家としての活動も開始しました。

1917年のロシア革命後、政府の依頼でレーニン、トロツキー、スターリンといった指導者たちの肖像画を制作しました。1920年には国立高等工芸研究所の教授に就任し、同年に国家プロジェクトとして二つの集団スペクタクル『解放された労働の讃歌』と『冬宮奪取』の演出を担当しました。1914年から1925年の間に、彼が舞台にかけた戯曲は40篇にも上ります。この時期には、ニコライ・エヴレイノフやフセヴォロド・メイエルホリドといった芸術家たちと共同制作を行いました。

亡命後の活動と遺産

1925年、共産主義政権下での芸術活動に限界を感じたアンネンコフはパリへと渡り、その後生涯ソ連に帰国することはありませんでした。フランス、西ドイツ、イタリアなどを中心に、演劇や映画の美術を手がけ、本の装幀においても多くの作品を残しました。

主な著作と作品

画集
Georges Annenkoff Portraits（1922年、Petropolis社）
Семнадцать портретов（1926年、国立出版所）
回想録
Дневник моих встреч. Цикл трагедий （2巻）
邦訳：青山太郎訳『同時代人の肖像』上・中（1971年、現代思潮社）

アンネンコフの作品は、その時代と社会を反映しつつ、卓越した技術と革新的な精神にあふれています。彼の芸術は、20世紀ロシア美術の重要な一角を担い、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。

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