ユーロポール・アフガニスタン

ユーロポール・アフガニスタンとは

ユーロポール・アフガニスタン（EUPOL Afghanistan）は、欧州連合（EU）がアフガニスタンの警察制度改革を支援するために設立した組織です。2007年から2016年まで活動し、アフガニスタン国家警察（ANP）の能力向上、制度改革、そしてより広い司法制度との連携を促進することを目的としていました。

設立の背景

アフガニスタンは長年の内戦により警察組織が崩壊していました。2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、多国籍軍がアフガニスタンに侵攻し、暫定行政機構の設立と国際治安支援部隊（ISAF）の派遣が決定されました。治安部門の改革は、アフガニスタン再建における国際協力の重要な柱の一つと位置づけられました。

EUは、共通安全保障防衛政策（CSDP）の一環として、文民ミッションであるユーロポール・アフガニスタンを派遣しました。これは、テロリズム、大量破壊兵器の拡散、地域紛争、組織犯罪といったグローバルな脅威に対し、軍事的な対応だけでなく、非軍事的な手段も組み合わせて柔軟に対応するというEUの戦略に基づいています。

目的と戦略

ユーロポール・アフガニスタンの主な目的は以下の2点でした。

1. アフガニスタンが持続可能で効率的な警察政策を確立できるよう支援すること。
2. 信頼でき効率的な警察サービスの改革を支援すること（国際基準に準拠し、人権を尊重）。

これらの目的を達成するため、ユーロポールは以下の6つの戦略目標を掲げ、ミッション実施計画（MIP）を策定しました。

警察の指揮・統制・通信の改善
インテリジェンス主導の警察活動の推進
犯罪捜査部門の能力構築
腐敗防止戦略の履行
警察と司法の協力強化
ANPにおけるジェンダーと人権の尊重

任務と支援事例

ユーロポール・アフガニスタンの任務は、大きく以下の3つに分類されます。

1. 内務省の制度改革を進める
2. 国家警察の専門化を促進する
3. 国家警察をより広い司法制度に接続する

具体的な支援事例としては、以下のようなものがあります。

犯罪捜査の手法と手順の改善
文民警察の原則の普及
警察官の育成（約3万1000人の訓練生に約1400の訓練コースを提供）
警察訓練校の運営支援
* 司法省の刑事立法担当者への支援（法律草案の作成支援など）

活動の変遷と課題

ユーロポール・アフガニスタンは、活動開始当初は人員や設備が不足し、治安の悪化も重なり、十分な活動ができませんでした。しかし、徐々に規模を拡大し、2012年には職員数が最大341人に達しました。2009年以降は、アメリカ合衆国の治安改善への取り組み強化や、NATOによるアフガニスタン訓練ミッション（NTM-A）の設立など、国際的な協力体制も強化されました。

一方で、警察官の識字率の低さや、法執行機関・司法機関における汚職の蔓延といった問題も存在しました。また、NATOとの規模の違いから、国際交渉や職員採用に苦労する場面もありました。

評価と終了

欧州会計監査院は、ユーロポール・アフガニスタンの活動について、内務省の制度改革や国家警察の専門化において一定の成果があったと評価しました。特に、地域社会型警察活動の定着、警察と検事の協力関係の進展、全国規模の選挙の安全確保、警察の指揮・統制・通信体制の向上などが評価されました。

しかし、国家警察をより広い司法制度に接続するという点については、被告人や被疑者の権利保護、政府高官の汚職追及といった面で課題が残ると結論付けました。2016年12月、ユーロポール・アフガニスタンの権限は失効し、9年間にわたる支援活動は終了しました。

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