ヨウィアヌス

フラウィウス・ヨウィアヌス：短命皇帝の生涯と長く続く系譜

フラウィウス・ヨウィアヌスは、4世紀のローマ帝国を揺るがした皇帝の一人です。331年にシンギドゥヌム（現在のベオグラード）で生まれ、将軍の父ウァロニアヌスのもとで育ちました。ヨウィアヌス自身も軍人としての道を歩み、優れた才能を発揮し、やがて執政官にまで昇進します。

彼の運命を大きく変えたのは、サーサーン朝との戦争でした。この戦争で皇帝ユリアヌスが戦死すると、後継者不在という事態に陥ります。ユリアヌスは後継者を指名しておらず、適当な親族もいませんでした。そのため、軍隊によってヨウィアヌスが皇帝に推戴されたのです。これは、まさに戦乱の混乱の中で、軍部の意思によって選ばれた皇帝と言えるでしょう。

しかし、ヨウィアヌスの皇帝としての時間は長くは続かず、わずか8か月で終わります。彼は、兵糧が尽きかけた状況で、ペルシア王シャープール2世との間で屈辱的な講和条約を締結せざるを得ませんでした。アルメニアとメソポタミアのチグリス川以東の領土をペルシアに割譲するという、ローマ帝国にとって大きな痛手となる条約でした。

帰還の途上、ビテュニア属州でヨウィアヌスは急死します。火鉢による一酸化炭素中毒が死因とされていますが、暗殺説も根強く残っています。彼の死は、多くの謎を残したまま、歴史の闇に消えていきました。

ヨウィアヌスはキリスト教徒の支持を得るため、異教時代の蔵書を収蔵していたアンティオキア図書館を焼き払うという蛮行に出ました。しかし、この行為はキリスト教徒からも批判され、彼の治世は短命に終わっただけでなく、非難と疑問に満ちたものとなりました。ペルシアとの敗北、図書館の焼失、そして謎めいた死。ヨウィアヌスの皇帝としての生涯は、数々の困難と不運が重なった短い期間でした。

家族と驚くべき子孫

ヨウィアヌスの家族については、妻カリト（ルキッリアヌスの娘）と息子ウァロニアヌス（363年 - 380年以降）の存在が知られています。他に360年生まれの子女がいたと伝えられていますが、詳細は不明です。

しかし、注目すべきは、ヨウィアヌスの血筋が予想外に長く続いていることです。息子のウァロニアヌスには娘マリアがおり、その子孫はその後も幾世代にもわたって続いていきます。

マリアはArchilと結婚し、息子のArdakをもうけます。Ardakの子、Wachtangは東ローマ帝国皇帝レオ1世の皇女ヘレナと結婚しました。さらに、その子孫はデメトリオスにまで続き、彼は東ローマ帝国のヘラクレイオス王朝の皇族と結婚し、その血筋はその後も存続したとされています。

デメトリオスの母方の家系も、ステファンの子孫が続いていると伝えられています。このように、短命に終わったヨウィアヌスの治世とは対照的に、その子孫は驚くほど長く、そして予想外の広がりを見せているのです。この事実は、歴史における個人の影響が、直接的な権力や治世の長さだけで測れないことを示唆していると言えるでしょう。ヨウィアヌスの生涯と子孫の系譜は、歴史の複雑さと、個人の運命と家系のつながりの不思議さを改めて感じさせる、興味深い物語です。

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