ヨウ化エチル

ヨウ化エチル：性質、製造、用途

ヨウ化エチル(別名：ヨードエタン)は、有機ヨウ素化合物の一種で、化学式C₂H₅Iで表されます。常温では無色の油状液体として存在し、特有の臭気を持ちます。引火性があり、61℃以上では空気と爆発性の混合気体を形成するため、取り扱いには注意が必要です。また、空気や光にさらされると分解し、褐色を帯びることが知られています。

物理的性質

ヨウ化エチルは様々な有機溶媒に溶解します。エタノールやジエチルエーテルには任意の比率で溶解し、ベンゼン、エーテル、四塩化炭素などにも溶解性を示します。水には難溶性です。その揮発性から、空気中に拡散しやすく、吸入による健康への影響も懸念されます。

化学的性質

ヨウ化エチルは、求電子剤としての性質を持ち、様々な有機金属化合物の合成に用いられます。特に、グリニャール試薬（EtMgI）の合成中間体として重要です。エーテル溶媒中でマグネシウムと反応させることで、EtMgIを合成できます。このグリニャール試薬は、炭素-炭素結合形成反応に広く利用される重要な試薬です。

製造方法

ヨウ化エチルの一般的な製造方法は、赤リンと無[水]]エタノールの混合物にヨウ素を加えて加熱する方法です。この反応では、まず赤リンとヨウ素が反応して三ヨウ化リン]がin situで生成されます。この不安定な[三ヨウ化リンが無水エタノールと反応し、ヨウ化エチルと亜[[リン酸]が生成します。この反応は発熱反応であるため、温度管理が重要です。

化学反応式は以下の通りです。

3C₂H₅OH + PI₃ → 3C₂H₅I + H₃PO₃

反応後、蒸留によってヨウ素やリン酸などの不純物を除去し、精製することで高純度のヨウ化エチルを得ることができます。

安全性

ヨウ化エチルは引火性が高く、空気との混合気体は爆発性を示します。そのため、取り扱いには適切な換気と防爆設備が必要です。また、皮膚や粘膜への刺激性があり、吸入すると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。取り扱う際には、保護手袋、保護眼鏡、保護マスクなどの適切な保護具を着用する必要があります。保管は冷暗所で、直射日光を避け、密閉容器で行うべきです。廃棄処分も適切な方法に従って行う必要があります。

用途

ヨウ化エチルは、主に有機合成化学において、グリニャール試薬合成の中間体として広く利用されています。グリニャール試薬は、様々な有機合成反応において重要な役割を果たしており、医薬品、農薬、機能性材料などの合成に不可欠な試薬です。また、他の有機ヨウ素化合物の合成原料としても用いられています。

参考文献

松岡敬一郎『ヨウ素綜説（第二版）』霞ヶ関出版、1992年
国際化学物質安全性カード ヨウ化エチル ICSC番号:0479 (日本語版), 国立医薬品食品衛生研究所, (2004-04)

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