ヨウ化カドミウム

ヨウ化カドミウム：性質、合成、そして独特の結晶構造

ヨウ化カドミウムは、化学式CdI₂で表されるカドミウムのヨウ化物です。無色の光沢を持つ板状結晶として存在し、その美しい結晶構造と特異な性質から、化学の分野で広く研究されています。

合成法

ヨウ化カドミウムはいくつかの方法で合成できます。一つは、金属カドミウムとヨウ素を水中で加熱して反応させる方法です。この反応により、カドミウムイオン(Cd²⁺)とヨウ化物イオン(I⁻)が生成し、それらが結合してヨウ化カドミウムが析出します。


Cd + I₂ → Cd²⁺(aq) + 2I⁻(aq) → CdI₂


反応後、水溶液を濃縮すると、無色のヨウ化カドミウムの結晶が得られます。

別の合成法としては、[ヨウ化カリウム]と硫酸[カドミウム]水溶液を混合する方法があります。この反応では、ヨウ化カドミウムと硫酸カリウム(K₂SO₄)が生成します。


2KI + CdSO₄ → CdI₂ + K₂SO₄


生成したヨウ化カドミウムは、蒸発乾固後にエタノールで抽出し、さらに蒸発させることで精製できます。

物理的性質

ヨウ化カドミウムは、六方晶系に属する無色の結晶です。その格子定数はa = 4.24Å、c = 6.84Å、Cd−I結合距離は2.99Åと精密に測定されています。水に非常に溶けやすく、エタノール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒にも溶解します。しかし、空気中で長時間、可視光線にさらされると、ヨウ素を生成し、黄色みを帯びて変色することが知られています。

化学的性質

ヨウ化カドミウムは、水溶液中で弱電解質として振る舞います。これは、カドミウムイオンとヨウ化物イオンが錯体を形成するためです。複数の錯イオンが段階的に生成し、それぞれの段階における錯生成定数(K)は、1.6M硝酸カリウム水溶液中で以下のように報告されています。

Cd²⁺ + I⁻ ⇌ [CdI]⁺ logK₁ = 2.96
[CdI]⁺ + I⁻ ⇌ [CdI₂] logK₂ = 1.33
[CdI₂] + I⁻ ⇌ [CdI₃]⁻ logK₃ = 1.07
[CdI₃]⁻ + I⁻ ⇌ [CdI₄]²⁻ logK₄ = 1.00

これらの錯生成定数は、ヨウ化カドミウムの水溶液におけるイオン平衡を理解する上で重要な情報となります。

ヨウ化カドミウム型構造

ヨウ化カドミウムの結晶構造は、「ヨウ化カドミウム型構造」として知られる特異な層状構造です。ヨウ化物イオンはほぼ六方最密充填構造を形成し、その間隙にカドミウムイオンが位置しています。具体的には、c軸方向の層の一つおきに、八面体六配位の間隙にカドミウムイオンが配置されている構造となっています。この構造は、ヨウ化物イオンが水酸化物イオンに置換された構造は水酸化カドミウム型構造と呼ばれ、多くの2価の金属のヨウ化物および臭化物に見られる一般的な結晶構造です。

ヨウ化カドミウムの合成法、その物理的・化学的性質、そして独特の結晶構造は、基礎化学研究において重要な知見を提供しています。また、その性質を応用した様々な用途も期待されています。

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