ヨツユビリクガメ

ヨツユビリクガメ

ヨツユビリクガメ（学名: Agrionemys horsfieldii）は、リクガメ科に属するカメの一種で、ヨツユビリクガメ属を構成する唯一の種です。その名の通り、前足に4本の指を持つことが特徴です。別名ホルスフィールドリクガメとも呼ばれています。

分布

ヨツユビリクガメは、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン南部、カザフスタン、タジキスタン、中国（新疆ウイグル自治区西部）、トルクメニスタン東部、パキスタンなど、中央アジアから西アジアにかけての広範囲に分布しています。キルギスにも分布する可能性があります。模式標本の産地はアフガニスタンのカーブル周辺です。

形態

ヨツユビリクガメは、最大甲長が28cmになる比較的小型のカメです。背甲は扁平で、腹甲には蝶番がありません。前肢はシャベル状で、穴掘りに適しています。指は4本で、これが和名の由来となっています。

分類

以前は、チチュウカイリクガメ属に分類されていましたが、分子系統解析の結果、インドリクガメ属やパンケーキガメ属、ヘルマンリクガメ属と近縁であることが分かり、独立したヨツユビリクガメ属となりました。亜種については、独立種とする説もありますが、分布の境目が不明瞭であることや、中間的な個体が多いことから、亜種を認めない説もあります。

亜種

アフガニスタンヨツユビリクガメ (Agrionemys horsfieldii horsfieldii)
アフガニスタン、ウズベキスタン南部、タジキスタン、トルクメニスタン東部、パキスタン北部に分布します。甲高が高く、上から見ると丸みを帯びる傾向がありますが、個体変異が大きいです。背甲の色は、暗黄色や黄褐色（北部個体群）、淡黄色（南部個体群）などがあります。暗色の斑紋は不明瞭か、ないことが多いです。
バルキスタンヨツユビリクガメ (Agrionemys horsfieldii baluchiorum)
イラン南西部、パキスタン南西部に分布します。最大甲長は20cmで、背甲は扁平で丸みを帯びています。背甲と頭部、四肢は暗褐色をしています。
カザフスタンヨツユビリクガメ (Agrionemys horsfieldii kazachstanica)
ウズベキスタン北部、カザフスタン、トルクメニスタン北部に分布します。最大甲長は23cmで、背甲は扁平で幅広く、前縁と後縁が直線的で角張っています。背甲の色は明黄色や薄黄緑色など、変異が大きいです。初生甲板とその周囲は暗色ですが、成長に伴い形成された甲板は暗色斑がないか、あっても小型です。
トルクメニスタンヨツユビリクガメ (Agrionemys horsfieldii rustamovi)
トルクメニスタン（コッペターク山脈）に分布します。最大甲長は17cmですが、トルクメニスタン南部の個体群を含めると最大甲長は28cmになります。背甲は扁平で丸みを帯びています。背甲は黄色で、大型の暗色斑があります。尾の先端には鉤状の大型鱗があります。

生態

ヨツユビリクガメは、砂漠、ステップ、地中海性気候の地域などに生息しています。昼行性ですが、夏季は薄明薄暮性傾向が強くなります。自分で巣穴を掘り、その中で生活します。北部や高地に分布する個体群は冬季に、南部や乾燥地帯に分布する種は夏季に休眠します。カザフスタンの個体群のように、年間を通して3ヶ月しか活動しないこともあります。

食性は植物食で、植物の葉、花、果実などを食べます。繁殖は卵生で、1回に3～5個の卵を産みます。

人間との関係

ヨツユビリクガメは、牧草や農作物を食害する害獣とみなされることがあります。また、生息地の破壊や乱獲により、個体数が減少しています。

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されています。主に野生個体や卵を採取して孵化させた個体が流通していますが、欧州や日本国内での飼育下繁殖個体も流通しています。安価であることから、リクガメ飼育の入門種として紹介されることもあります。

その他

中国では、国家一級重点保護野生動物に指定されています。

参考文献

(参考文献リストは、必要に応じて追加してください)

関連項目

リクガメ科
トーマス・ホルスフィールド - 学名の由来となった博物学者

もう一度検索