ヨハネス・イッテン

ヨハネス・イッテン：バウハウスを彩った芸術家、教育者、そして理論家

ヨハネス・イッテン (1888年11月11日 - 1967年5月27日) は、20世紀を代表するスイスの芸術家であり、教育者、そして造形理論家として知られています。彼は、絵画やデザインの創作活動のみならず、教育者としての活動、そして独自の造形論・色彩論の確立を通して、現代美術に多大な影響を与えました。

教職から芸術への転身

ベルンに生まれたイッテンは、当初は初等・中等教育の教員として職に就いていました。しかし、青騎士や分離派といった芸術家グループ、そして後にバウハウスの中核メンバーとなる芸術家たちとの出会いを経て、美術への情熱を深めていきます。画家アドルフ・ヘルツェルに師事し、ヘルツェルやフランツ・チジェクといった巨匠たちから大きな影響を受けました。この経験が、彼の後の芸術家としての道を決定づけることになります。

バウハウスでの活動と独自の教育理念

1917年にはウィーンで自身の絵画学校を開設、その高い芸術性と指導力によって高い評価を得ました。そして1919年、運命の転機が訪れます。ヴァルター・グロピウスに招聘され、ヴァイマル時代のバウハウスにおいて予備課程の教師(マイスター)を務めることになったのです。

バウハウスにおいて、イッテンは彼の革新的な教育理念を展開しました。精神主義的な教育アプローチは、グロピウスの考え方とは相容れない部分もあり、1923年にはバウハウスを去ることになります。しかし、彼のバウハウスでの活動は、後の多くの芸術家に大きな影響を与え、バウハウスの教育理念そのものに貢献しました。 その後も彼は、Gertrud Grunowやパウル・クレー、Georg Mucheといった著名な芸術家たちと交流し、共同で教育活動に携わりました。

イッテン・シューレと晩年の活動

バウハウス退任後も、イッテンの教育活動は続きます。1926年にはベルリンに「イッテン・シューレ」という私設学校を設立します。この学校には日本からの留学生も多く、1933年には竹久夢二が日本画講座を担当するなど、国際的な交流も盛んに行われました。しかし、1934年にはナチスの台頭により閉校を余儀なくされます。

その後も、クレーフェルトのテキスタイル学校校長（1932年-1938年）、チューリッヒ芸術学校校長（1938年-1954年）、リートベルク美術館館長（1952年-1956年）と要職を歴任し、教育者、そして美術界の指導者として活躍しました。さらに1955年にはウルム造形大学で色彩コースの授業を担当するなど、晩年まで精力的に活動を続けました。

イッテン表色系：独自の色彩理論

イッテンは、作品制作と並行して独自の造形論・色彩論を展開しました。特に、絵具を混色することによって作り出された12色の色相環、そして白と黒を中心軸に据えた球体の色立体を用いた色彩調和論は特筆すべきものです。この独自の色彩体系は「イッテン表色系」と呼ばれ、現在でもデザインや美術教育の分野で広く活用されています。

日本におけるイッテン

イッテンの作品は日本でも展覧会が開催されるなど、高く評価されています。彼の芸術、教育、そして理論は、国境を越えて多くの芸術家に影響を与え続け、現代美術の発展に大きく貢献したといえるでしょう。彼の功績は、現代美術史においても重要な位置を占めています。

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