ヨハネス・ユストゥス・ライン

ヨハネス・ユストゥス・ラインの生涯と業績

ヨハネス・ユストゥス・ライン（Johannes Justus Rein, 1835年1月27日 - 1918年1月23日）は、19世紀に活躍したドイツの地理学者であり、日本研究の先駆者として知られています。ヘッセンのラウンハイムで国境警備隊の息子として生まれたラインは、ギーセン大学で植物学と科学を学びました。その後、教員養成学校を経て、フランクフルト・アム・マインなどで教鞭を執り、1861年にロストック大学で博士号を取得しました。

教師としてのキャリアを積む中で、ラインはドルパート、バミューダ諸島、イギリスなどで家庭教師を務めました。ロンドンでは大英博物館に通い、研究を深めました。1870年までゼンケンベルク自然史協会のディレクターを務め、その後も研究のため世界各地を旅しました。

日本での調査活動

1873年（明治6年）、プロイセン政府の命により、日本の工芸調査のため来日しました。通訳として三田佶が同行しました。当初の目的は、漆器の製造技術と漆の工業利用に関する調査でした。しかし、ラインは工芸研究にとどまらず、北海道を除く日本各地を旅行し、地理や産物についても詳細な調査を行いました。彼の調査は、日本の自然、文化、産業に関する貴重な記録となりました。

特に、白山登山中に石川県白峰村（現在の白山市）で発見した植物化石は、地質学的に重要な発見となりました。この化石がジュラ紀中期のものであると判明し、その後の研究によって「桑島化石壁」として国の天然記念物に指定されました。また、この功績を記念し、化石壁の近くに作られたトンネルは「ライントンネル」と名付けられました。

帰国後の活動と著作

1876年（明治9年）に帰国したラインは、マールブルク大学で地理学教授に就任し、1883年にはボン大学の地理学教授となりました。1881年と1886年には、日本での調査に基づいて執筆した報告書『Japan nach Reisen und Studien im Auftrage der Königlich Preussischen Regierung（プロイセン王国による日本への派遣）』を出版しました。この報告書は、日本の工芸技術を詳細に記述しており、ジャポニスムブームの中で大きな反響を呼びました。英語版も出版され、国際的な評価を得ました。

ラインは、1888年にイギリスの王立地理学会の会員に推薦され、1893年のシカゴ万博、1900年のパリ万博では審査官を務めました。また、近衛篤麿、新渡戸稲造など、訪独した多くの日本人とも交流を持ちました。西園寺八郎（西園寺公望の娘婿）はライン家に寄宿していたこともあります。

1910年に引退し、ボンで没しました。彼の著書は、日本研究における重要な資料として、現在も高く評価されています。

ラインの主な著作

『日本』第1部 自然誌（1881年発行）・第2部 産業史（1886年発行）
『みかどの国の自然と国民』（1881年発行）
* Japan nach Reisen und Studien im Auftrage der Königlich Preussischen Regierung. 2 Bände. Leipzig: Engelmann 1881/86.

ラインの遺産

ラインが発見した桑島化石壁が存在する旧白峰村では、彼の功績を讃え、毎年「ライン祭」が開催されています。2015年には、白山市合併10周年を記念して「ライン賞」が創設され、小中学生の「化石」や「地理」への関心を深めることを目的としています。

ラインの日本研究は、日本の文化や地理を西洋に紹介し、国際的な理解を深める上で重要な役割を果たしました。彼の著作や研究活動は、今日においても貴重な資料として活用されています。

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