ヨハネス21世 (ローマ教皇)

ヨハネス21世の生涯

ヨハネス21世（1215年 - 1277年5月20日）は、中世のローマ教皇であり、その在位期間は1276年から1277年までのわずか8ヶ月でした。本名をペドロ・ジュリアォンといい、ラテン語ではペトルス・ヒスパヌスとして知られています。彼は、現在に至るまで唯一のポルトガル出身の教皇です（ダマスス1世もポルトガル出身の説がありますが、確証はありません）。

生い立ちと教育

リスボンで生まれたとされるヨハネス21世は、リスボン大聖堂内の神学校で教育を受けました。その後、パリ大学で学んだとされていますが、一部の歴史家は彼がモンペリエ大学で学んだと主張しています。1245年から1250年の間には、ペドロ・ヒスパノという名でシエナ大学で薬学を教鞭を執りました。この時期に、彼の著作で最も有名な『論理学綱要』（Summulae Logicales）を執筆しました。この本は、その後300年以上にわたりヨーロッパの大学で教科書として使用されることになります。

学者から教皇へ

大学講師として名声を確立したヨハネス21世は、リスボンに戻り、ポルトガル王アフォンソ3世の教会関係の顧問・スポークスマンとして仕えました。また、ギマランイスの修道院長も務めましたが、リスボン司教への就任は叶いませんでした。その後、リスボンの学校講師を経て、グレゴリウス10世の主治医となりました。

1276年8月18日にハドリアヌス5世が亡くなると、ペドロは同年9月13日のコンクラーヴェで教皇に選出され、ヨハネス21世となりました。しかし、彼の治世は短く、実質的な政治は枢機卿ジョヴァンニ・ガエターノ（後の教皇ニコラウス3世）が主導しました。ジョヴァンニは聖地への十字軍結成を目指し、正教会とカトリック教会の合同やキリスト教国の平和維持に尽力しました。また、タタール人の改宗にも取り組みましたが、成果を上げることはできませんでした。

突然の死

ヨハネス21世は、ヴィテルボにある別荘に新棟を増築しましたが、その工事の不手際により、就寝中に屋根が崩落する事故に見舞われました。この事故で重傷を負い、8日後の1277年5月20日に亡くなりました。偶然の事故死を遂げた教皇は、おそらく彼が唯一です。遺体はヴィテルボのドゥオーモに埋葬され、現在も彼の墓を見ることができます。死後、「ヨハネス21世は魔法使いだった」という噂も広まりました。

ダンテ・アリギエーリは『神曲』の中で、太陽の天球でヨハネス21世と出会い、偉大な宗教学者たちの魂と共に語り合った場面を描いています。

ヨハネス21世の業績

論理学

ヨハネス21世の代表的な著作である『論理学綱要』は、「13世紀ヨーロッパにおける最も典型的なスコラ哲学の論理学書」とされ、中世の大学における教養課程で数百年にわたって使用され、何度も改訂されたことで知られています。現代においても、中世ヨーロッパの学問を理解する上で必読の書とされています。

医学

ヨハネス21世は、性交前後の避妊法に関する包括的な指南書である『貧者の宝』（Thesaurus Pauperum）を執筆したとされています。この書物では、産児制限に関する助言や月経を起こす方法が記述されています。彼が記述した方法の中には、現代の研究でも効果的とされるものがあり、古典古代の女性が以前考えられていたよりも積極的に産児制限を行っていた可能性を示唆しています。ただし、『貧者の宝』の著者が本当にヨハネス21世であるかについては、疑問も呈されています。

また、彼は眼の研究に関する著作も残しており、医学の分野においても重要な貢献をしました。

脚注

参考文献

Maxwell-Stuart, P. G. "Chronicle of the Popes: The Reign-by-Reign Record of the Papacy from St. Peter to the Present," Thames & Hudson, 2002, p. 119. ISBN 0500017980.

関連項目

教皇ヨハネスの代数

もう一度検索