ヨハン・ガルトゥング

ヨハン・ヴィンセント・ガルトゥング

ヨハン・ヴィンセント・ガルトゥング（Johan Vincent Galtung）は、1930年10月24日にノルウェーのオスロで生まれ、2024年2月17日に93歳で亡くなった著名な社会学者および数学者です。彼は平和研究の先駆者として世界的に知られ、数々の重要な理論や実績を残しました。

人物・来歴

ガルトゥングは歴史的なヴァイキングの時代に起源を持つ貴族の家系に生まれました。父は医者であり、オスロの副市長も歴任した陸軍少尉でした。彼はオスロ大学で数学と社会学の博士号を取得し、1959年にはオスロ国際平和研究所（PRIO）の創設者となり、1970年までその代表を務めました。さらに、彼は1964年に雑誌『Journal of Peace Research』を設立し、ヨーロッパでの平和研究の発展に貢献しました。

20代半ばの頃、ガルトゥングは良心的兵役拒否者として12カ月間の非武装労働に従事しましたが、その後延長を拒否したために6カ月の労働刑務所に収監されました。この経験は、彼の平和研究と社会的理論に大いに影響を与えました。

主な業績と貢献

ガルトゥングは、戦争のない状態を「消極的平和」と定義し、さらに貧困、抑圧、差別などの構造的暴力が存在しない状態を「積極的平和」と概念化しました。彼はこれまでにスリランカ、アフガニスタン、北コーカサス、エクアドルなど、世界中で40以上の紛争において仲介者の役割を果たしてきました。

日本においてもガルトゥングの影響は大きく、中央大学、国際基督教大学（ICU）、関西学院大学、立命館大学、創価大学などで客員教授を務めました。特に彼は、安倍晋三が掲げた「積極的平和主義」に対して、自身の主張がまったく異なることを明言しています。彼の「積極的平和」とは、戦争がない状態にとどまらず、根本的な貧困や差別の eradication（根絶）を目指すものです。

尖閣諸島の領有権問題に関しても、ガルトゥングはユニークな解決策を提案しています。彼は中国と日本がそれぞれ40%の権益を持ち、残りの20%を北東アジア共同体のために利用するというアイデアを示しました。このアプローチは、双方の対立を和らげ、協力を促すための平和的手段として注目されました。

邦訳著書

ガルトゥングの影響力は著作にも表れており、彼の作品は日本語に翻訳されています。主な単著には『90年代日本への提言―平和学の見地から』（1989年）、『平和への新思考』（1989年）や『市民・自治体は平和のために何ができるか』（1991年）などがあります。また、共編著として『平和への選択――対談』（1995年）や『日本は危機か』（1999年）などもあります。

最後に

ガルトゥングはその分野における重要な理論家であり続け、国際的な視野を持つ平和の実践者としての活動を重ねてきました。彼の工作と思想は、平和構築と紛争解決の重要性を改めて認識させるものです。彼の死は世界の平和学において大きな損失ですが、彼が残した知見と理念は今後も多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

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