ヨハン・バプティスト・フォン・エスターライヒ

ヨハン・バプティスト・フォン・エスターライヒ

ヨハン・バプティスト・フォン・エスターライヒ（Erzherzog Johann Baptist von Österreich、1782年1月20日 - 1859年5月11日）は、オーストリア帝国の軍人であり皇族であり、また1848年革命期にはドイツ帝国の摂政としても知られる存在です。彼の全名はヨハン・バプティスト・ヨーゼフ・ファビアン・ゼバスティアン（Johann Baptist Joseph Fabian Sebastian）です。彼は「アルプス王」や「シュタイアーマルクのプリンス」といった異名を持ち、広く民衆から慕われた人物でした。

生い立ちと背景

ヨハン大公は、女帝マリア・テレジアの三男であるトスカーナ大公レオポルド（後の皇帝レオポルト2世）とスペイン王女マリア・ルドヴィカの間に、イタリアのフィレンツェで生まれました。家族の中で、皇帝フランツ2世と共に育った兄弟のうち、有能な軍人であるカール大公に特に親近感を持っていたと言われています。

彼の父であるレオポルドが、自身が軍人として活躍する姿を期待したため、ヨハンは戦場に送り出されます。戦争による多くの死者を目にしたことが、深く心に傷を残しました。さらに、平民出身の兵士たちとの交流を通して、貴族や宮廷の生活に嫌気が差すようになりました。

地域社会への貢献

ヨハンは山岳地帯に惹かれ、スイスの風景に感銘を受けましたが、自国のチロルにも美しい自然があることに気づくと、地域への愛着が深まります。彼は非常に活発な人柄であり、シュタイアーマルク州の農業、鉱工業、林業の振興に力を注ぎ、学校や病院を設立し、地域社会の発展に貢献しました。特に1809年のチロル動乱の際には、民衆の味方として活躍します。

1811年には、自然科学の研究と技術教育を目的にグラーツにヨアネウムを設立し、教育の普及にも力を入れました。

私生活と結婚

長い間、宮廷に精神的な居場所が見つからず孤独を感じていたヨハンですが、1819年に偶然出会った15歳の平民の娘アンナ・プロッフルに心を奪われます。彼女との交際は深まり、1822年には重い病にかかった際に彼女の存在の重要性を痛感し、結婚を決意。しかし、貴族社会からの反発もあり、一度は結婚許可を得たものの、話題にしないことを約束しなければなりませんでした。

その後、彼は「家政婦」という名目でアンナと共に生活を始め、ついに1829年に正式な結婚の許可を受け、結婚に至ります。

家族と死

子供がなかなかできずにいた彼らですが、1839年に男児フランツが誕生しました。ヨハンは彼に相応しい地位と爵位を願い、メッテルニヒと交渉を重ねた結果、フランツは「メラン伯爵」の称号を得ることとなります。この時、メッテルニヒの思惑もあったとも言われています。

地域社会から愛された彼は、健康を保ち続けましたが、年齢と共にアンナが領地の管理を担うようになりました。1859年、彼は77歳でこの世を去り、大甥のフランツ・ヨーゼフ1世やエリーザベト皇后らはその死を悼みました。アンナも1885年に亡くなり、二人揃って南チロルのシェーナに埋葬されました。

ヨハンの死後、地元の人々は「ヨハン大公のヨーデル」という歌を歌い始め、彼の人柄と功績を讃えていったと伝えられています。この歌は日本でも広く知られ、その存在によってレコードの売れ行きが変わるほどの影響を持ちました。

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