ヨーク・ボウエン

エドウィン・ヨーク・ボウエン（Edwin York Bowen）は、1884年2月22日にロンドンのクラウチ・エンドに生まれ、1961年11月23日にその生涯を閉じたイギリスの作曲家、並びにピアニストです。

ボウエンはロンドンの王立音楽アカデミーで学び、後には母校で教鞭をとるまでになりました。彼の作曲スタイルは後期ロマン派に深く根ざしており、その生涯を通じて数多くの作品を生み出しました。特にピアニストとしての技量は高く評価されており、自身の作品の演奏も行っています。

イギリス音楽界において、ボウエンはそのキャリアの初期から第一次世界大戦期にかけては高い評価を得ていました。しかし、戦後になると、アーノルド・バックスのようなより現代的な音楽語法を用いた作曲家たちが注目を集めるようになり、ボウエンの音楽は相対的に時代遅れと見なされ、彼の評価は次第に低下していきました。多作であるにもかかわらず、彼はしばらくの間、「マイナーな作曲家」として扱われる時期がありました。

ボウエンの作品は非常に多岐にわたります。大規模な管弦楽曲としては、3つの交響曲（第1番 ト長調 Op.4、第2番 ホ短調 Op.31、第3番 Op.137）や交響詩（「タッソの哀歌」 Op.5など）、序曲などがあります。また、様々な楽器のための協奏曲も多く作曲しており、4曲のピアノ協奏曲（第1番 変ホ長調 Op.11、第2番 ニ短調 Op.17、第3番 ト短調 Op.23、第4番 イ短調 Op.88）のほか、ヴァイオリン協奏曲、ヴィオラ協奏曲、チェロと管弦楽のための狂詩曲、ホルン協奏曲などがあります。

室内楽曲も非常に豊富で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットといった様々な楽器を用いたソナタ、三重奏曲、四重奏曲、五重奏曲などがあります。特にヴィオラのための作品は、ヴィオラ・ソナタ（第1番 Op.18、第2番 Op.22など）やヴィオラを含むアンサンブル曲が多く、この楽器のための重要なレパートリーを提供しています。

そして、ボウエンの創作活動の中心と言えるのがピアノ曲です。彼は数多くのピアノ・ソナタ（第1番 Op.6、第2番 Op.9、第3番 Op.12、第5番 Op.72、第6番 Op.160）、練習曲（『12の練習曲』 Op.46、『12の簡単な即興曲』 Op.99など）、組曲、前奏曲、バラード、ロマンス、奇想曲などを作曲しました。中でも、彼の円熟期にあたる1938年に完成された『24の前奏曲』Op.102は、全ての長短調を網羅しており、カイホスルー・シャプルジ・ソラブジに献呈され、ソラブジ自身から高い評価を受けました。この前奏曲集には、ボウエン自身による抜粋の自作自演録音も残されています。また、2台ピアノ曲やピアノ連弾曲も複数作曲しています。

近年、ボウエンの音楽、特に彼のピアノ作品は再び注目を集めるようになっています。現代の優れたピアニストであるスティーヴン・ハフがボウエンのピアノ作品を積極的に演奏・録音しているほか、ハフによる校訂版の楽譜も出版されており、その音楽的遺産が見直されつつあります。ボウエンは、卓越した技術と後期ロマン派の豊かな表現力を兼ね備えた作曲家として、現代において再評価される価値のある存在と言えるでしょう。

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