ヨーネ菌

ヨーネ菌とは、正式名称をMycobacterium avium subspecies paratuberculosisといい、細菌の分類上、放線菌類に属するマイコバクテリウム属の一亜種に位置づけられています。

この細菌は、特定の宿主動物の体内環境でのみ増殖が可能である「偏性病原性真正細菌」として知られています。つまり、生きた宿主から離れた環境では長期的に生存・増殖することが極めて困難な性質を持っています。

研究や診断の分野では、しばしばその略称である「Map」と呼ばれるほか、「M. paratuberculosis」や、「M. avium sub. paratuberculosis」といった形で表記されることもあります。世界中で研究に用いられている標準的な株としては、ATCC 19698という番号で登録されている株がよく知られており、これはCIP 103963やDSM 44133といった他の主要な細菌株コレクションにおいても同等の株として扱われています。

病原性

ヨーネ菌は、動物の健康、特に畜産業において重要な病原体です。

反芻動物への影響

この細菌は、ウシやヒツジ、ヤギなどの反芻動物に「ヨーネ病」という慢性的な消耗性疾患を引き起こす主要な原因菌です。

ヨーネ病は、感染動物の消化管、特に小腸に炎症を引き起こし、栄養吸収の障害や慢性的な下痢、体重減少、そして最終的な衰弱を招きます。感染は通常、子牛などが汚染された環境や親の乳を介して菌を経口摂取することで成立しますが、病状が顕著になるまでには数年を要することも珍しくありません。畜産農家にとって、ヨーネ病は群全体の生産性低下や感染拡大による経済的な損失をもたらす深刻な問題となっています。

ヒトへの関連性（議論）

さらに、ヨーネ菌はヒトの健康、特に慢性炎症性腸疾患の一種であるクローン病との関連性が一部で指摘されています。これは、クローン病患者の腸組織などからヨーネ菌のDNAや菌体の一部が検出されるケースがあること、あるいは感染後の免疫応答がクローン病の病態に関わる可能性が示唆されていることなどが根拠とされています。

しかしながら、ヨーネ菌がクローン病の直接的な原因であるとする説については、科学的な議論が続いており、広く受け入れられた結論には至っていません。多くの研究が行われていますが、ヨーネ菌とクローン病の間の明確な因果関係や、もし関連がある場合の病態におけるヨーネ菌の具体的な役割については、依然として解明されていない点が多く、今後のさらなる研究が必要とされています。

偏性病原性であるヨーネ菌の性質は、その検出や培養を困難にし、研究を進める上での課題の一つともなっています。

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