ヨーロッパブナ (魚類)

ヨーロッパブナの詳細解説

ヨーロッパブナ（学名: Carassius carassius）は、コイ科に属する淡水魚で、ヨーロッパを原産とします。その生息範囲は広く、西はイギリスから東はロシアまで、北はスカンジナビアの北極圏から南はフランス中部や黒海に至るまで、様々な環境に適応しています。

生息環境

主に湖沼や流れの緩やかな河川に生息しています。イギリスでは在来種として確認されています。

誤解と分類

ヨーロッパブナは、日本を含むアジア原産とする資料も存在しますが、これは誤りです。英語名である "Crucian Carp" がフナ属の総称であること、また種小名が属名と同じであることから混同が生じたと考えられます。

形態

ヨーロッパブナは中型のコイ科魚で、通常は体長15cm程度、体重1.5kg未満です。しかし、最大で体長64cm、体重3kgに達する個体も記録されています。2～3年で成熟しますが、近年は成長が鈍化し、本来の20～30cm級に達せず、15～20cm程度で成長が止まる個体が多いと報告されています。

体色は、一般的に光沢のある金緑色とされますが、若い個体は金色に近いブロンズ色をしており、成長するにつれて黒味を帯びてきます。成魚では、背縁が濃緑色からオリーブ濃茶色、側面上部はブロンズ色、側部下部と腹部は金色、胸鰭は赤みがかかったオレンジ色になります。体色には個体差も見られます。

見分けるポイントとして、背びれが丸く凸扇型に湾曲している点が挙げられます。これは、背びれ外郭が凹型にくぼんでいるキンギョ系のフナとは明確に異なります。

体形と生態

ヨーロッパブナは、生息環境によって異なる体形を示すことが知られています。カワカマスやパーチのような天敵が存在する水系では、細身で低体高な体形から、ずんぐりとした高体高の体形（ヘラブナ形）へと変異します。

交配種

ヨーロッパブナとキンギョ系フナの交配種が存在することは、アクアリストの間ではよく知られています。野生環境下でも、両種が共存する生態系から雑種と思われる個体が報告されています。実験室的な環境では、両種が交配して子孫を残すことが確認されていますが、その交配種は繁殖力が乏しいか、または皆無であるとされています。しかし、交配による遺伝子汚染や雑種強勢による在来種の駆逐が懸念されています。

釣り

イギリスでは、ヨーロッパブナは「雑魚釣り部門」の対象魚とされています。過去には2kgを超える個体が記録されていますが、近年記録されている大型個体は、ヨーロッパブナではなく交配雑種であるとされています。オランダでは、体長54cm、重さ3kgの個体が撮影されています。

キンギョ系との区別

キンギョ（Carassius auratus auratus）は、ヨーロッパブナの改良品種であるとする文献もありますが、これは誤りです。近年の遺伝子学研究では、キンギョの祖先はギベリオブナであることが確立されています。しかし、ヨーロッパブナとキンギョ系雑種の見分けが必要なため、注意が必要です。

利用

ヨーロッパブナは、観賞魚として水槽で飼育されることがありますが、錦鯉やコイ科のオルフェほど人気はありません。しかし、水産業においては重要な養殖魚の一つとされており、FAOの統計では世界の養殖魚ランキングで上位に位置しています。ただし、この統計にはギベリオブナの養殖も含まれており、その大部分は中国での養殖によるものです。淡水魚の漁獲データでは、カザフスタン、日本、セルビアなどが上位となっています。

各国の料理

ポーランドでは、フナを「カラシュ」と呼び、フライパンで調理するのが一般的で、特にサワークリームに浸した料理が伝統的です。ロシアでは、ヨーロッパブナを「ザラトーイ・カラースィ」と呼び、ボルシチに仕立てて食べられています。

ヨーロッパブナは、その生息域や生態、利用など、多岐にわたる興味深い側面を持つ魚です。この記事が、その理解を深める一助となれば幸いです。

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