ライオネル・ロビンズ

ライオネル・チャールズ・ロビンズ

ライオネル・チャールズ・ロビンズ（1898年11月22日 - 1984年5月15日）は、イギリスの著名な経済学者であり、特に経済学の方法論に関する貢献で知られています。彼は、1930年代にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）の経済学部長として、イギリスにおける大陸ヨーロッパの経済理論を紹介し、LSEをケンブリッジ大学に対抗する学術の拠点に育て上げました。

経歴のハイライト

ロビンズは第一次世界大戦に従軍した後、ギルド社会主義に惹かれましたが、その実効性には幻滅を覚えます。1920年、LSEに入学し、初めは政治学を学んでいましたが、経済学に転向し、後にエドウィン・キャナンやヒュー・ダルトンから学びました。1923年にLSEを卒業し、その後はベヴァリッジの助手として働くことになりました。

彼は1925年にLSEの教授陣に加わり、1929年には経済学部長に就任しました。1941年から1945年までの間、彼は政府の経済部門に勤務し、戦時経済や社会保障政策の策定に参与しました。戦後は再びLSEに戻り、1961年までその経済学部長として活動しました。

LSEとオーストリア学派

ロビンズがLSEの学部長に就任した際、彼は自由市場とオーストリア学派経済学に理解を示し、フリードリヒ・ハイエクを招聘しました。彼の時代のLSEでは、ヒックスやカルドアといった数学的アプローチを重視する若手研究者が育ち、彼らの活動によってLSEは新古典派経済学の中心地となりました。また、ロビンズ自身もマーシャル派の経済学者との論争に積極的に関与し、ケインズ主義や効用論についての議論を展開しました。

戦時中の政策立案

ロビンズは1940年代に内閣経済部の役職を担い、戦時経済や労働政策を立案しました。特に、ナショナル・ミニマムや社会保障など、戦時下での経済運営に大きく貢献しました。また、1943年のホット・スプリングス会議や1944年のブレトンウッズ会議にも参加し、国際経済秩序の確立に寄与しました。

戦後の活動と経済学への影響

戦後、ロビンズは高等教育への関与を深め、1963年に「ロビンズ報告」を発表し、大学教育の拡充を提言しました。さらに、1959年には一代貴族に叙位され、学界や文化機関でも活動を展開しました。たとえば、ナショナル・ギャラリーやテート・ギャラリーの評議員などとしても活動しました。彼の経歴の最後の部分では、経済学の学説史に対する関心が高まり、1980年代にはその講義が出版されています。

学問的業績

ロビンズの著作で最も有名なのは、1932年の『経済学の本質と意義』です。この中で彼は、経済学を「様々な用途を持つ希少性のある資源と目的との間の関係としての人間行動を研究する科学」と定義し、今日でも広く引用されています。この定義は彼の経済学に対するアプローチを象徴しており、限界革命に基づく新古典派の流れと密接に関連しています。

論争と批判

特にマーシャル派の経済学者との論争が彼の経済学者としてのキャリアの中で重要な位置を占めました。彼は効用の個人間比較について強く批判し、その結果、ピグーの厚生経済学にも挑戦しました。最終的に彼の主張は、後の厚生経済学の再構成にも影響を与えており、ジョン・ヒックスやニコラス・カルドアといった経済学者が新しいフレームワークを基づいて理論を構築する際に、彼の視点が反映されています。

影響と評価

ロビンズの経済学に対する姿勢や経済哲学は、イギリスのみならず、英語圏全体に影響を与えました。彼の学問的貢献は、経済学の異なる流派や学派との対話を促進し、今日の経済学界における論争と発展に寄与しています。1984年に85歳で亡くなるまで、彼の存在は多くの経済学者にとって指標となり続けました。

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