ライス・ア・ロニ

ライス・ア・ロニ：サンフランシスコの味覚

ライス・ア・ロニは、米とパスタ、そして風味豊かな調味料を組み合わせた、手軽に楽しめるピラフです。ペプシコの子会社であるクエーカーオーツカンパニーから販売されていますが、その歴史は、19世紀後半のカリフォルニア州に遡ります。

イタリアからの移民とパスタ事業

1895年、イタリア出身のドメニコ・"チャーリー"・デドメニコは、アメリカに渡りカリフォルニア州で生鮮食品販売を始めました。事業は成功し、彼はイタリア人の女性と結婚、帰郷してパスタ工場を経営した後、1912年にはサンフランシスコで再びパスタ事業を展開しました。

彼の会社「Gragnano Products, Inc.」は、地元のイタリア系レストランや食料品店にパスタを卸していました。デドメニコの息子たち、パスキー、ビンス、トム、アンソニーも家業を継ぎ、1934年には会社名を「ゴールデン・グレイン・マカロニ社」に変更しました。

家庭料理から生まれた人気商品

転機は、トムの妻ルイスが考案した米とマカロニの料理でした。これは、親戚から譲り受けたピラフのレシピをヒントに作られたもので、家族の夕食として振る舞われました。1958年、ビンスはこれに乾燥チキンスープを加える改良を加え、「ライス・ア・ロニ」が誕生しました。

この画期的な商品は、まず太平洋岸北西部で発売され、その後全米へと広がっていきました。「サンフランシスコの味覚！」というキャッチコピーとともに、瞬く間に人気商品となりました。

商品の進化と企業買収

ビンスは、1964年のイタリア旅行でフェットゥチーネ・アルフレードに触発され、「ヌードル・ロニ・パルマジャーノ」を開発しました。その後、さまざまな形状のパスタやソースのバリエーションが加えられ、1995年には「ヌードル・ロニ」から「パスタ・ロニ」へと名称変更されました。

1986年、ゴールデン・グレイン・マカロニ社はクエーカーオーツカンパニーに買収され、2001年にはクエーカーオーツカンパニーがペプシコに買収されました。2003年には、ゴールデン・グレインの商標権がツリーハウス・フーズに売却されましたが、ライス・ア・ロニはペプシコに残りました。

ライス・ア・ロニのレガシー

ライス・ア・ロニは、一家の家庭料理から始まり、今ではアメリカを代表する食品の一つへと成長しました。その手軽さとおいしさから、長年に渡り多くの人々に愛され続けています。また、その名前は、ライス・ア・ロニにちなんだ昆虫の名前にも使われているほど、アメリカ文化に深く根付いています。

この商品は、イタリア移民の家族が持ち込んだ伝統的な食文化と、アメリカでの創意工夫が融合して生まれた、まさにアメリカンドリームの象徴と言えるでしょう。その歴史とストーリーは、食文化の進化と、企業買収という現代資本主義のダイナミズムを同時に示す興味深いものです。

もう一度検索