ライブ!! はっぴいえんど

『ライブ!! はっぴいえんど』は、1974年1月15日にリリースされた、はっぴいえんどのライブ・アルバムです。1970年代に発表された唯一の公式ライブ盤であり、1973年9月21日に東京・文京公会堂で開催された解散記念コンサート“CITY—Last Time Around”の模様が収録されています。

実質的な解散は前年12月であったため、このライブは再結成という側面も持ち合わせていました。メンバー4人が揃ってステージに立つのは、前年8月30日の徳島市立文化センター以来のことでした。当時、はっぴいえんどはすでに一定の評価を得ていましたが、アメリカで録音されたサード・アルバムが1973年に発表されたこともあり、一般的にはこのコンサートをもって活動に終止符を打ったと認識されていました。

アルバムには、はっぴいえんどの演奏に加え、西岡恭蔵、大瀧詠一とココナツ・バンクの演奏も収録されています。ただし、コンサートの全曲が収録されているわけではなく、曲順もアルバム用に再構成されています。

コンサート当日、会場は小雨模様でしたが、開場前から多くのファンが列を作り、満員の熱気に包まれました。かまやつひろしが司会を務め、ニッポン放送のパーソナリティである亀渕昭信や、春一番コンサートのプロデューサー福岡風太もマイクを握りました。コンサートの模様は録音され、文化放送の番組で放送されました。

コンサートは3部構成で行われました。第1部では、はっぴいえんどのメンバーがプロデュースを手がけ、風都市が売り出そうとしていた南佳孝、吉田美奈子、西岡恭蔵、ココナツ・バンクが登場しました。第2部では、はっぴいえんどのメンバーがそれぞれ取り組んでいた新しい音楽性を披露。大滝詠一はココナツ・バンクやシュガー・ベイブを率い、松本隆はムーンライダーズ、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆はキャラメル・ママとして出演しました。

第3部は、はっぴいえんどの解散ライブでしたが、演奏スタイルはキャラメル・ママに近く、ブラックミュージックの影響を受けたポップスに傾倒していました。セカンド・アルバム『風街ろまん』でハードなロックナンバーだった「はいからはくち」は、シングルとは異なるバージョンで演奏されました。このライブでの演奏も過去のバージョンとは大きく異なっていました。

はっぴいえんど解散後、細野と鈴木はキャラメル・ママを結成し、松本はムーンライダーズを率いました。彼らは皆、ファンクのリズムに強い関心を持っており、それが演奏にも反映されていたと考えられます。大滝は慣れないリズムで歌ったためか、「はいからはくち」の最初のフレーズで歌い損ないそうになり、すぐに「ヘイ」というかけ声で立て直しました。

「抱きしめたい」では、歌が2番から始まるというミスがありました。エンジニアの吉野金次によれば、PAと録音を兼任していたため、PAに気を取られているうちに録音テープの残量が少なくなっていることに気づかず、慌ててテープを交換したとのことです。そのため、2番からしか録音できず、拍手を被せてフェードインする形になりました。

大滝の「それでは最後にこの4人でしかできない曲をやります」というMCから始まるラスト3曲はアンコールで、この部分が最もはっぴいえんどらしさを感じさせます。鈴木慶一がピアノで参加しています。アンコール終了後、松本はスティックを客席に投げ込み、コンサートは大団円を迎えました。しかし、全体としては「終わり」よりも「始まり」を予感させるライブ盤と言えるでしょう。

ベルウッドから発売された本作と同日には、トリオ・レコードから『1973.9.21 SHOW BOAT 素晴しき船出』がリリースされ、南佳孝、ムーンライダーズ、ココナツ・バンク、吉田美奈子の演奏が収録されました。

アルバムには、歌詞カードのほか、ポスター、ディスコグラフィ、北中正和による「“CITY”が開いた輝かしい夜」と富沢一誠による「フォーク&ロック・シーンの状況を塗りかえたはっぴいえんど」の2つのライナーノーツが封入されています。ジャケットは被せ帯仕様で、上部の赤い部分を上げた裏面に、松本隆の「はやすぎた回想録」が掲載されています。帯は袋状ではなく、1枚の両面印刷となっています。

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