ライル・メイズ

ライル・メイズ

ライル・メイズ（Lyle Mays）は、1953年11月27日にアメリカ合衆国ウィスコンシン州ウォーソーキーで生まれた、ジャズ界を代表するピアニスト、キーボーディスト、そして作曲家です。彼は特にギタリストのパット・メセニーとの長年にわたる協力関係、そしてパット・メセニー・グループの共同リーダー兼サウンドの要として世界的に知られています。

メイズは、パット・メセニー・グループにおいて、その独特で広がりあるシンセサイザーの音色をもってグループサウンドのトレードマークを確立しました。しかし、彼はシンセサイザーをサウンドテクスチャやハーモニーの彩りとして巧みに用いる一方で、インプロヴィゼーションやソロ演奏の多くは、彼のアコースティック・ピアノの卓越した技術と表現力によって行われています。その対比こそが、彼の演奏スタイルの大きな特徴の一つと言えるでしょう。グループでの活動を通じて、『オフランプ』、『トラヴェルズ』、『ファースト・サークル』、『スティル・ライフ』、『レター・フロム・ホーム』など、数々のグラミー賞受賞作品を含む歴史的なアルバム制作に深く関わり、その作曲やアレンジメントにおいても中心的な役割を果たしました。

パット・メセニー・グループ以外にも、メイズは自身の名義で優れたソロ作品を発表しています。彼のソロアルバムは、グループでの活動とはまた異なる、内省的で洗練された音楽世界を提示しています。『心象風景 - ミラー・オブ・ザ・ハート』（1986年）、『ストリート・ドリームス』（1988年）、『フィクショナリー』（1993年）、『ソロ - 残響』（2000年）、そして晩年に近い時期に発表された『ルートヴィヒスブルク・コンサート』（2016年）といった作品群は、彼の作曲家、そしてピアニストとしての多様な才能を示しています。特に『フィクショナリー』では、マーク・ジョンソン、ジャック・ディジョネットといった名手たちとのトリオ編成で、より純粋なピアノトリオの探求を行っています。

また、彼はパット・メセニーとの共同名義による名盤『ウィチタ・フォールズ』（1981年）を制作したほか、パット・メセニーのソロプロジェクトにも参加しています。さらに、ジャズ界のみならず、ジョニ・ミッチェル、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、ボビー・マクファーリン、トゥーツ・シールマンスなど、多岐にわたるジャンルの著名アーティストたちのレコーディングやライブに参加し、その類稀なる音楽的才能を提供しました。これらの客演は、彼の音楽性の幅広さと、ミュージシャン仲間からの厚い信頼を物語っています。

ライル・メイズは、再発性の病との長きにわたる闘病生活の後、2020年2月10日にカリフォルニア州ロサンゼルスにて逝去しました。66歳でした。彼の音楽は、コンテンポラリー・ジャズやクロスオーバーといった分野において、多くのミュージシャンに影響を与え続けています。独特の美しいサウンドスケープと、高度なインプロヴィゼーション能力、そして心に響く作曲は、彼がジャズ史に残した大きな遺産と言えるでしょう。

主要ディスコグラフィ（抜粋）

ソロ・アルバム

『心象風景 - ミラー・オブ・ザ・ハート』 - Lyle Mays (1986年)
『ストリート・ドリームス』 - Street Dreams (1988年)
『フィクショナリー』 - Fictionary (1993年)
『ソロ - 残響』 - Solo: Improvisations for Expanded Piano (2000年)
『ルートヴィヒスブルク・コンサート』 - The Ludwigsburg Concert (2016年)

パット・メセニー・グループ

『パット・メセニー・グループ』 - Pat Metheny Group (1978年)
『アメリカン・ガレージ』 - American Garage (1980年)
『オフランプ』 - Offramp (1982年)
『トラヴェルズ』 - Travels (1983年)
『ファースト・サークル』 - First Circle (1984年)
『スティル・ライフ』 - Still Life (Talking) (1987年)
『レター・フロム・ホーム』 - Letter From Home (1989年)
『イマジナリー・デイ』 - Imaginary Day (1997年)
『スピーキング・オブ・ナウ』 - Speaking Of Now (2002年)
『ザ・ウェイ・アップ』 - The Way Up (2005年)

パット・メセニー&ライル・メイズ

『ウィチタ・フォールズ』 - As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls (1981年)

その他主な参加作品

ジョニ・ミッチェル : 『シャドウズ・アンド・ライト』 - Shadows and Light (1980年)
アース・ウィンド・アンド・ファイアー : 『ヘリテッジ』 - Heritage (1990年)
ボビー・マクファーリン : Medicine Music (1990年)
トゥーツ・シールマンス : 『イースト・コースト、ウェスト・コースト』 - East Coast West Coast (1994年)

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