ライーヤトワーリー制度

ライーヤトワーリー制度についての考察

ライーヤトワーリー制度（Raīyatwārī Settlement）は、イギリスが統治していたインドにおいて導入された特異な土地所有及び徴税の制度です。この制度は、特にマドラスとボンベイの管区で実施されましたが、北インドでのザミーンダーリー制度に対する批判から生まれました。なお、「ライーヤト」という言葉はペルシア語で「耕作する者」を意味します。

制度の導入背景

18世紀末、イギリス東インド会社はカーナティック戦争やマイソール戦争を経て、多様な徴税方法を模索していました。特に南インドでは、農地に関する制度が未発達であったため、北インドの制度をそのまま適用することに対して懸念がありました。1789年から1799年にかけて、トーマス・マンローとリード大尉による試行が行われた地域では、土地制度の安定化を目指してライーヤトワーリー制度が導入されたのです。

19世紀初頭には本国からの命令により、マドラス管区にもザミーンダーリー制度が施行されました。しかし、この制度がもたらした税負担や滞納問題の増加によって、イギリスにおける農業の収益構造に疑問が生じました。その後、マンローらのロビー活動を経て、ライーヤトワーリー制度がマドラス管区に本格的に導入されました。1830年代には、ボンベイ管区でもエルフィンストンによって施行されることとなります。

制度の概要

ライーヤトワーリー制度は、マイソール王国の徴税制度を模倣し、農民（ライーヤト）を正式な土地所有者と見なす形で規定されました。この制度の大きな特徴は、農民と政府の間に従来の徴税請負人や地主が介在しないことです。農民に近代的な土地所有権が与えられたことにより、全ての土地は独立した徴税単位に区画され、これにより私有可能な土地が大幅に増えました。

しかし、実際にはライーヤトとして認められたのは一部の富裕な農民であり、一般の農民は制度から除外されました。議論によっては、ライーヤトの文字通りの意味に基づき、実際に農作業を行っている者が認識されるのか、大地主としての役割が重視されるのかで意見は分かれました。

地価や地税の算定には土質、水利、市場との距離に基づく多くの要因が考慮され、それに基づいて3～5年ごとに改定が行われました。しかし、制度の導入には多くの労力がかかり、すぐには実施できなかったため、実施範囲の広がりには時間がかかりました。

制度の影響と結果

ライーヤトワーリー制度は、社会の安定を試みる一方で、地租が引き上げられることが常でした。1840年代にロバート・プリングルが制定した高額な税額は農民に大きな負担を強い、彼の後任であるオールドスミッドが税額を引き下げるまでは、多くの農民が困窮しました。また、制度により土地の共同体が崩壊し、農民と土地の切り離しが進む中で、借金を背負った農民は高利貸しや商人に土地を取られることが増え、1775年のデカン農民反乱の一因となりました。

ライーヤトワーリー制度は、形の上では土地の近代的な所有権を確立したように見えましたが、実際には多くの問題を内包しており、農民たちに厳しい状況をもたらしました。土地や農業に関する政策がもたらした新たな社会構造は、長期的には安定をもたらすのではなく、逆に社会の不満を助長する結果となったのです。

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