ラガー (ビール)

ラガー：独自の醸造法で魅了するビールスタイル

ラガーとは、ドイツ語で「貯蔵」を意味し、主に下面発酵で醸造されるビールのスタイルです。日本国内では、「貯蔵工程で熟成させたビール」として定義されており、その苦味とまろやかさが特長です。

このビールは、主に麦芽を使用しており、サッカロマイセス属のカールスベルゲンシスという酵母を用いて、低温（10℃以下）で長時間かけて発酵させます。このカールスベルゲンシスという名前は、1881年に初めてこの酵母が培養されたカールスバーグに由来しています。発酵が進むにつれて酵母は底に沈んでいくため、このように呼ばれるようになりました。

1984年、カールスベルゲンシスはサッカロマイセス・セレビシエに分類変更され、現在では、ラガービールに使われる酵母は、Saccharomyces cerevisiaeとSaccharomyces eubayanusの自然交雑によって誕生したSaccharomyces pastorianusであることがわかっています。このような経緯を辿る中で、ラガーはどのように世界に広まり、現代での地位を確立していったのでしょうか。

元々、ラガーはドイツのバイエルン地方の地元ビールとして親しまれていました。この地域では軟水のため、硬水を必要とするエールビールの製造が難しかったのですが、地元の醸造師たちは低温下で活動できる酵母を利用して、特殊な製法でビールを作り始めました。秋の終わりにビール樽を氷と一緒に洞窟に貯蔵し、翌年の春に取り出すこの方法がラガーというスタイルを象徴するようになりました。

19世紀の冷却機の発明により、ラガーは急速に普及し、エールが主流だった時代からビール業界の中心的存在へと移行しました。ラガーの生産には冷却機といった大規模な設備が必要ですが、その低温環境のおかげで雑菌の繁殖が少なく、大量生産が可能になったことも、このスタイルの普及を助ける要因となりました。その結果、世界中の多くのビールメーカーがラガーを生産し、現在では世界のビール生産量の大部分を占めています。

ラガーには多くのスタイルがあり、例えば以下のようなものがあります：

• - ピルスナー：チェコのピルゼン地方が発祥のビール。一般的にスッキリした味わいが特徴。
• - ヘレス：ドイツ語で「淡色」を意味し、飲みやすいビールです。
• - エクスポート：ドルトムントやミュンヘン産のビールで、少し高めのアルコール度数が特徴です。
• - メルツェン：赤みがかった琥珀色のビール。
• - ドゥンケル：言葉の通り、濃い色合いのビールです。
• - ボック：特に濃いビールで、濃褐色が特徴です。
• - マイボック：春に出荷されるボックビールで、アルコール度数が高い。
• - ドッペルボック：さらに濃厚なビールで、高いアルコール度数が特徴です。
• - アイスボック：ドッペルボックを部分凍結させ強化されたビールです。
• - フェストビア：現代のフェストビアは飲みやすく、アルコール度数も高めです。

このように、ラガーはその魅力的な味わいと豊富なスタイルにより、世界中のビール愛好家から親しまれています。

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