ラクチカゼイバチルス・カゼイ・シロタ株

ラクチカゼイバチルス・カゼイ・シロタ株

ラクチカゼイバチルス・カゼイ・シロタ株（学術名：Lacticaseibacillus casei strain shirota, YIT 9029）は、人々の健康維持に貢献してきた代表的な乳酸菌の一つです。「ヤクルト菌」や「LCS」といった通称でも親しまれ、広告などではしばしば「L.カゼイ・シロタ株」や単に「乳酸菌 シロタ株」と表記されることもあります。

この乳酸菌は、酸素があってもなくても生育できるという特性、すなわち通気嫌気性を持つ菌として知られています。その分類については、発見以来いくつかの変遷を経ています。当初は「ラクトバチルス・アシドフィルス・シロタ株」と呼ばれていましたが、後に「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」に改められました。最新の分類体系では「Lacticaseibacillus casei」に再分類されていますが、かつては遺伝的に近縁な「Lactobacillus paracasei」に分類されるべきだという見解も存在しました。

シロタ株の最も重要な特徴の一つは、その高い耐酸性です。口から摂取された後、胃の強い酸や小腸で分泌される胆汁の中でもほとんど死滅することなく生き抜くことができます。この性質によって、生きたまま腸に到達し（主に小腸で活動）、便として排泄されるまでその働きを続けることが可能です。

この生きて腸まで届くという特性を活かし、シロタ株は主にヤクルト本社が製造・販売する乳酸菌製品に利用されています。代表的な乳酸菌飲料である「ヤクルト」をはじめ、「ジョア」「ソフール」「ピュアラ」「プレティオ」など、特定保健用食品としても認可されている多くの乳製品に主成分として配合されています。ただし、「ミルミル」や「ビフィーネ・ビフィア」のようにビフィズス菌を主要成分とする製品には含まれていません。

ヤクルト製品の名称に付されている数字は、含有されるシロタ株の数を示していることが多いです。例えば、「ヤクルト400」は400億個のシロタ株を含有しています。「Newヤクルト」には容器に「200」と記されており、200億個が含まれていることを意味します。また、「Yakult1000」には1100億個というように、製品によって含有量は異なります（一部例外の製品名もあります）。これらの数字は、摂取によってどれだけの数のシロタ株を腸に届けられるかの目安となります。

シロタ株は、1930年（昭和5年）に医学博士である代田稔氏（後のヤクルト創始者）によって発見されました。代田博士は京都帝国大学（現在の京都大学）の医学部微生物学教室で、腸に有益な働きをする乳酸菌の探索と研究を進める中で、強い酸性条件で培養を繰り返すことによって、胃液にも負けない特に生命力の強い乳酸菌株を選び出すことに成功しました。これがシロタ株の始まりであり、その発見当初は、耐酸性の高さから「ラクトバチルス・アシドフィルス・シロタ株」と名付けられました。

このように、シロタ株はその発見から現在に至るまで、科学的な研究に基づいた特性とその利用を通じて、多くの人々の健やかな暮らしを支える重要な存在となっています。

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