ラゴンダ・ラピード

ラゴンダ・ラピード：短命に終わった新生ラゴンダの挑戦

アストンマーティン社が1961年から1964年にかけて製造したラグジュアリー4ドアGTカー、ラゴンダ・ラピード。その歴史は、かつて栄光を誇ったレーシングカーメーカー、ラゴンダの復活劇と深く関わっています。

ラゴンダの輝かしい歴史と苦難

1906年に創設されたラゴンダは、ロンドン～エディンバラ、モスクワ～サンクトペテルブルクといった長距離公道レースで、ベントレーやアルファロメオといった名門と競い合いました。ル・マン24時間レース優勝という輝かしい実績も持ちます。しかし、その歴史は常に経営不安と隣り合わせでした。1935年のル・マン制覇の後も、経営難からアラン・グッドに買収されるなど、波乱万丈の道を歩みます。

第二次世界大戦後、自動車業界が大量生産体制に移行する中、ラゴンダは時代の波に乗り遅れ、経営破綻へと追い込まれます。1948年、ギアやトラクターなどを製造するデビッド・ブラウン社に買収され、同社が既に傘下に収めていたアストンマーティンと統合されることになります。

アストンマーティン傘下でのラゴンダ復活への試み

アストンマーティンとの棲み分けを図るため、ラゴンダは4ドア車専門ブランドとして再出発することになります。そして、その復活の象徴として登場したのが、ラゴンダ・ラピードです。車名は、ラゴンダのル・マン優勝車「M45R ラピード」に由来しています。

デザインとメカニズム

ラゴンダ・ラピードは、アストンマーティンDB4をベースに開発されました。伸びやかなボディライン、控えめなテールフィン、個性的な4灯ヘッドライト、独特のラジエーターグリルなど、当時の流行を取り入れたデザインが特徴です。しかしながら、独自のデザイン性には欠け、高い評価を得るには至りませんでした。

一方で、アストンマーティンを象徴するスーペルレッジェーラ工法による軽量な車体、本革をふんだんに使用した豪華な内装、ウォールナットのダッシュボードとピクニックテーブルなど、贅を尽くした作りとなっています。

搭載されるのは、新設計の4.0L直列6気筒DOHCエンジン。このエンジンは、後にアストンマーティンDB5にも搭載されることになります。ブレーキシステムは、サーボ付きディスクブレーキと二重配管を採用。リアサスペンションには、デフをばね上配置としたド・ディオンアクスルを採用し、これは後のDBSにも継承されました。トランスミッションは、4速MTと4速ATが用意されましたが、ほとんどの車両が4速ATで納車されました。

短命に終わった新生ラゴンダ

価格は4,950ポンドと非常に高価だったこともあり、ラゴンダ・ラピードの総生産台数はわずか55台に留まりました。しかし、そのうち48台が現存していると言われています。4年間という短い期間で生産終了となったものの、その名は1974年発表のアストンマーティン・ラゴンダ、そして2006年のDB9 4ドア版コンセプトカー、そして2010年から2020年まで生産されたアストンマーティン・ラピードへと受け継がれています。

ラゴンダ・ラピードは、栄光と苦難の歴史を持つラゴンダブランドの復活をかけた、挑戦の証と言えるでしょう。その希少性と豪華な装備は、今もなお多くのコレクターを魅了し続けています。

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