ラシン・クラブ・ド・フランス

ラシン・クラブ・ド・フランス：パリのスポーツ歴史を彩る総合クラブ

ラシン・クラブ・ド・フランス（Racing Club de France、略称RCF）は、フランス・パリ郊外のコロンブを本拠地とする由緒ある総合スポーツクラブです。1882年4月、パリの学生たちによって「ラシン・クラブ」として創設されました。当時、フランスにはイギリス人滞在者の影響もあり、総合型スポーツクラブ設立の機運が高まっていた時代背景がありました。1885年には現在の名称である「ラシン・クラブ・ド・フランス」に改称。1886年にはパリ市議会との協定により、ブローニュの森にグラウンドとクラブハウスを確保、会員数も1000名近くに達するほど発展しました。

RCFは、翌年に設立されたスタッド・フランセと共に、フランスにおけるスポーツ振興に大きく貢献しました。1887年には両クラブが中心となり「フランス徒競走協会」を設立、1890年には「フランス・アスレティック・スポーツ協会」を設立し、フランススポーツ界の中核を担いました。2000年当時、RCFは17ものスポーツ部門を擁し、会員数は20,000名に上る規模を誇っていました。

しかし、2006年、RCFはパリ市から譲渡されていたグラウンドの使用権を失い、ラガルデール・グループに20年間の契約で譲渡されました。この結果、バドミントン、柔道、フェンシング、トライアスロン、近代五種競技、水泳など多くの部門がラガルデール傘下に移り、RCFはゴルフ、ホッケー、テニス、水球、ライフル射撃、スキーの6部門に縮小されました。その後、2013年には柔道、陸上競技などの部門が再建され、8部門体制となり、サッカークラブ「ラシン・クラブ・ド・フランス・コロンブ92」やラグビークラブ「ラシン・メトロ92」ともパートナーシップを締結するなど、活動を続けています。

陸上競技

1882年のクラブ創設と同時に設立された陸上競技部門は、数々のオリンピック選手を輩出しました。1900年パリオリンピックでは、ミシェル・テアトのマラソン金メダルを始め、銀メダル、銅メダルを獲得するなど、フランスの陸上競技界に大きな貢献をしました。オリンピックでのメダル獲得数は金3、銀8、銅10、世界選手権でも金2、銀7、銅2を獲得しています。

サッカー

「ラシン・パリ」の愛称で知られるサッカー部門は、フランスサッカー史において最も伝統のあるクラブの一つです。1930～40年代が全盛期で、フランスカップを5回制覇、1936年にはリーグ・アン優勝も達成しました。その後、低迷期を経て、1980年代にジャン＝リュック・ラガルデールがクラブを買収し、強化を進めました。1986年には1部リーグ復帰を果たしましたが、経営難により1990年に破産、アマチュアリーグへ降格するなど、浮き沈みの激しい歴史を歩んできました。リーグ・アン優勝1回、リーグ・ドゥ優勝1回、フランスカップ優勝5回という実績を残しています。

歴史的節目の年表

1896年：ラシン・クラブ・ド・フランスのサッカー部門として創設。
1932年：プロ化、「ラシン・クラブ・ド・パリ」と改称。
1966年：セダンと合併、「RCPセダン」と改称。
1967年：ラシン・クラブ・ド・フランスとして独立。
1983年：パリFCと合併、「ラシン・クラブ・ド・パリ」と改称。ジャン・リュック・ラガルデール会長就任。
1987年：「マトラ・ラシン」と改称。
1989年：ラガルデール会長退任、「ラシンパリ・1」と改称。
1990年：破産、アマチュアリーグ3部へ降格。
* 以降、名称変更を繰り返し、2006年には「ラシン・クラブ・ド・フランス」に回帰。

ラグビー

1892年創設のラグビー部門も、フランスを代表する歴史と伝統を誇るクラブです。2001年にはパリ交通公団(RATP)支援のUSメトロと合併し、「ラシン・メトロ92」に改称しました。フランス選手権トップ14で5回、プロD2で1回優勝するなど、輝かしい戦績を残しています。

ホッケー

RCFのホッケー部門は、男子で19回、女子で13回のフランス選手権優勝という圧倒的な実績を誇ります。長年に渡り、フランスホッケー界を牽引してきた存在です。

バスケットボール

1922年創設のバスケットボール部門は、1989年以降、チーム名を幾度と改称しながら、フランス選手権1部で3回、2部で4回優勝を収めるなど、フランスバスケットボール界に貢献してきました。

RCFは、その長い歴史の中で数々の栄光と苦難を経験してきました。しかし、常にパリのスポーツ界をリードし、多くの選手を育成し、フランスのスポーツ文化に多大な影響を与えてきたことは間違いありません。現在も、新たな時代に対応しながら、その伝統と精神を受け継いで活動を続けています。

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