ラジオテレタイプ

ラジオテレタイプ（Radioteletype、略称：RTTY）は、無線回線を介して二つのテレタイプ端末を接続し、文字情報を送受信する電気通信システムです。初期のデジタル通信技術の一つであり、特に短波帯での安定した通信が求められる場面で重宝されてきました。

技術概要

RTTYでは、様々な変調方式が用いられますが、最も一般的なのは周波数偏移変調（Frequency Shift Keying、FSK）です。FSKは、デジタル信号の0と1を異なる周波数で表現することで、ノイズの影響を受けにくく、安定した通信を実現します。

データの符号化には、通常5ビットの「ITA2コード」（別名：Baudot Code）が用いられます。これは、各文字を5ビットの組み合わせで表現するもので、スタートビットとストップビットが付加された非同期（調歩同期）方式で送受信されます。一部のシステムでは6ビットのITA2コードを使用することもありますが、より現代的なシステムでは7ビットや8ビットのバイトが使われることもあります。RTTYの通信速度は現代の標準からすると非常に遅く、一般的なボーレートは45.45ボー（約60語/分）です。この低速な通信速度とFSK変調の組み合わせが、RTTYを無線妨害に強くしている要因です。

主な用途

RTTYはその堅牢性から、以下のような用途で広く利用されています。

軍事組織: 世界各地の軍隊や海上保安庁、沿岸警備隊などの海上警備組織において、重要な通信手段として活用されています。特に、長距離かつ信頼性の高い通信が求められる状況下で、その価値を発揮します。
在外公館: 大使館や領事館、特にアフリカ、アジア、南米、東ヨーロッパなど、通信インフラが脆弱な地域で重要な役割を果たしています。
国際警察: インターポールによる国際指名手配などの情報発信にも用いられ、世界的な犯罪捜査において重要な役割を担っています。
気象通報: アメリカ合衆国沿岸警備隊などから、ほぼ連続的に送信される気象通報にも利用されており、航海者や気象観測に携わる人々にとって不可欠な情報源です。
アマチュア無線: アマチュア無線の世界でも、RTTYは人気の通信方式の一つです。低速ながらも安定した通信が可能であり、世界中のアマチュア無線家がRTTYを用いた通信を楽しんでいます。

発音について

RTTYの発音にはいくつかの異なる意見があります。一部の利用者、特にアメリカ軍では、RTTYではなく「RATT」という頭字語で呼ばれることもあります。また、アマチュア無線家などのRTTYを頻繁に利用する人々は、「ritty」と発音することが一般的です。

関連技術

RTTYは、他のデジタル通信技術の発展に影響を与えており、以下のような関連技術が存在します。

NAVTEX: 海上安全情報や気象情報をブロードキャストする国際的なシステムです。
PSK31: 比較的低速ながらも狭帯域で効率的な通信が可能なアマチュア無線向けのデジタル通信モードです。
AMTOR: 短波帯での無線電信において、エラー訂正機能を持つ通信プロトコルです。


RTTYは、その歴史と技術的な特徴から、現代でも特定の分野で重要な役割を果たしています。技術の進歩とともに新しい通信方式が登場していますが、RTTYの持つ堅牢性と信頼性は、今後も多くの場面でその価値を発揮し続けるでしょう。

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