ラジオニクス

ラジオニクス（radionics, radionix）

ラジオニクスは、生体エネルギーや波動を操作することで治療を行うと主張する機器、もしくは療法を指します。約100年前にアルバート・エイブラムスによって提唱されたこの理論は、「すべてのものは未知の波動を発しており、この波動が生体に影響を与え、機器によって測定可能であり、同調・変調することで逆にあらゆるものに影響を与えることができる」と主張します。しかし、現代科学においては、その波動の存在は証明されておらず、疑似科学とされています。

歴史

ラジオニクスの創始者であるアルバート・エイブラムス（Albert Abrams, 1863年 - 1924年）は、サンフランシスコ出身で、ハイデルベルク大学医学部を首席で卒業後、スタンフォード大学医学部で病理学を教え、医学科主任として博士号を取得しました。

エイブラムスは優れた診断専門医であり、特に打診法の名人でした。打診法とは、患者の体を軽く叩き、その共振音の変化から腫瘍の有無や病気を診断する方法です。ある日、研究室近くのX線装置が予告なしに作動した際、打診音が鈍くなることに気づき、生体に影響を与えるものが存在するだけで、生体が影響を受けるという仮説を立てました。

この仮説に基づき、エイブラムスは健康な人の額に癌組織サンプルを接触させ、その際に打診音が変化することを確認しました。この現象は1916年に『診断と処置の新しい概念』として発表されました。彼はさらに、病理学的サンプルが発する波動が電気と同様に導線を伝わることを発見し、これを「エイブラムスの電子反応（ERA）」と名付けました。

ERAは、ホメオパシーと同様の考え方で病気を治療します。例えば、マラリア患者の血液サンプルをセットし、打診音を聴きながら、マラリアに効果のあるキニーネを重ねると打診音が変化します。エイブラムスは、キニーネからの波動がマラリア血液からの波動を中和すると考えました。彼は、マラリアや梅毒にかかった組織が発する波動の性格を変えることのできる波動放射器を考案し、オシロクラストという治療装置を開発し、患者の治療に成功したとされています。

しかし、エイブラムスが一滴の血液サンプルを用いて遠隔診断を行ったという報告は、アメリカ医師協会の反感を買い、協会誌で批判されました。1924年にエイブラムスが死去した後も批判は続き、1954年にはFDAによってオシロクラストの使用が差し止められ、ERAは医学の表舞台から姿を消しました。

日本国内では、1995年に中村國衛医学博士（1939年～2010年）が開発したPRA（Psychogalvanic Reflex Analyser）による臨床応用研究が始まり、現在は一般社団法人PRA臨床応用研究会が中心となって研究が進められています。

影響

ラジオニクスは、著名な大学教授によって創始されたことから、一定の説得力を持ち、多くの信奉者と擁護者を生み出しました。しかし、診断と治療があいまいで科学的に証明されていないため、批判も多く、詐欺の道具として利用されることもあります。

エイブラムス以降の研究者・実践者としては、ルース・ドラウンやジョージ・デ・ラ・ワーなどが知られています。特に、トーマス・ガレン・ヒエロニムスは、自ら改良したラジオニクス装置（ヒエロニムスマシン）を用いて害虫を駆除したという話で、ラジオニクス装置を有名にしました。

参考文献

* 一般社団法人 ＰＲＡ臨床応用研究会ホームページ (http://www.pra-radi.jp/)

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