ラダミストゥス

ラダミストゥス (Rhadamistus)

ラダミストゥスは、古代イベリア王国の王子であり、時にアルメニア王として知られています。彼は51年から53年、54年から55年という短い期間にわたってアルメニアを統治しました。彼の治世は贅沢や専制に満ちていたと考えられており、最終的には反乱によって彼の地位は奪われました。ローマの歴史家タキトゥスの『年代記』にも彼に関する記録が残っています。

生涯の概略

ラダミストゥスは、イベリア王ファーズマン1世の子として生まれました。その美貌と野心、そして戦士としての才能によって人々に知られていました。しかし、父王ファラスメナス1世は、彼が権力を簒奪しかねないと恐れ、叔父であり義理の父でもあるアルメニア王ミトリダテスとの戦争を避けることを望んでいました。

この背景の中、ラダミストゥスは大軍を率いてミトリダテスに対抗し、ローマの指揮官カエリウス・ポリオと連携しつつアルメニアへ進軍しました。彼はゴルネアスの要塞にてミトリダテスを追い詰め、ポリオは賄賂の影響で守備隊に降伏を促しました。その結果、ミトリダテスはラダミストゥスに引き渡され、彼は約束に反してミトリダテスとその子を処刑し、自ら王位を手に入れました（51年）。

しかし、ローマはアルメニアのサポートを行わず、アルメニアから撤退するようラダミストゥスに要求しました。この隙をついて、カッパドキアの総督パエリグヌスがアルメニアに侵攻し、国土を略奪しました。これに対抗して、シリア総督クアドラトゥスが部隊を派遣しましたが、パルティアとの戦争を避けるために、すぐに撤回されてしまいました。結果として、パルティア王ヴォロガセス1世がアルメニアへ軍を送り、ラダミストゥスは追い払われました（53年）。

冬の時期が到来すると、パルティア軍は撤退を余儀なくされ、その結果ラダミストゥスは王座に復権されました。しかし、彼はパルティアに降伏した都市を裏切り者とし、厳しい罰を与えました。その結果、罰が適用された都市から反乱が起き、パルティアの王子がアルメニア王に据えられるという状況が展開されました（55年）。

ラダミストゥスは妻ゼノビアを連れて逃亡しましたが、彼女は長時間馬に乗ることができず、敵に捕まることを恐れ、自ら死を求めました。アラス川の岸で降伏したゼノビアは刺されて放置されましたが、何とか命を取り留め、羊飼いによって救われました。

一方で、ラダミストゥスはイベリアへ戻った後、父王に対する陰謀をめぐらせましたが、結局は父によって処刑されてしまいました。彼の人生は、権力への渇望とそれに伴う悲劇に満ちていました。

ラダミストゥスと芸術

ラダミストゥスは、彼の人生や物語が芸術作品にインスピレーションを与えたことでも知られています。1710年にはフランチェスコ・ガスパリーニによる台本『暴虐の愛、またはゼノビア』が発表され、1720年にはゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが『ラダミスト』を作曲しました。そして、18世紀半ばにはメタスタージオの台本を基にした二つのオペラ『ゼノビア』が作られました。ゼノビアが川岸で発見されるシーンは、多くの画家によって描かれた古典的なテーマです。

ラダミストゥスの物語は、藻裡中世から近代にかけて、様々な形で人々に語り継がれ、歴史とファンタジーが交錯する興味深い作品として今に伝えられています。

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