ラック (企業)

株式会社ラック

株式会社ラック（英: LAC Co.,Ltd.）は、日本の主要な情報通信企業の一つです。その事業の柱は、情報セキュリティソリューションとシステムインテグレーションサービスの二本立てであり、主に官公庁や国内の様々な企業を顧客としています。高度化・複雑化するサイバー攻撃への対策や、企業活動を支える情報システムの構築・運用において、長年にわたり培ってきた専門技術と知見を提供しています。

概要

株式会社ラックは、情報技術（IT）分野における多岐にわたるサービスを展開しています。これには、情報セキュリティに関するコンサルティングや、24時間365日の体制でネットワークの脅威を監視するサービス（代表的なものにJSOC - Japan Security Operation Centerがあります）、サイバー攻撃発生時の緊急対応（サイバー救急センター、旧サイバー119サービスなど）が含まれます。また、情報漏洩の原因調査、最新の脅威情報提供、セキュリティ意識を高めるための教育訓練なども手掛けています。さらに、顧客のニーズに応じた情報システムの設計・構築、データベースの構築支援といったシステムインテグレーションサービスも重要な事業領域です。これらに加え、情報システム関連商品の販売を行うディーラー事業も展開しています。

沿革

株式会社ラックの現在の形は、複数の企業の統合と再編を経て成り立っています。その源流は、1986年9月に設立された旧株式会社ラック（正式名称 Little eArth Corporation Co., Ltd.、略称LAC）と、1987年5月に日本IBMと旧株式会社ABC（現富士ソフト）の共同出資により誕生したエー・アンド・アイ システム株式会社（A&I System Co., Ltd.）に遡ります。

旧ラックは、早くから情報セキュリティの重要性に着目し、2000年5月には国内初の商用セキュリティ監視センターであるJSOCを設立しました。また、2002年4月にはジャスダック市場に上場を果たしています。一方のエー・アンド・アイ システムも、2000年7月にナスダック・ジャパン（現東証グロース）に上場するなど、それぞれが情報技術分野で独自の地位を築いていました。

両社は事業連携を深めた後、2007年10月に経営統合を実施。株式移転方式により共同持株会社としてラックホールディングス株式会社（LAC Holdings, Inc.）が設立され、両社はその完全子会社となりました。この持株会社体制の下で、2008年7月には株式会社アイティークルーがラックホールディングスの100%子会社として設立されています。旧ラックは、サイバー攻撃の被害に特化した緊急対応を行う「サイバー救急センター」を2009年10月に新設するなど、セキュリティ分野での専門性をさらに高めました。

そして2012年4月1日、ラックホールディングスは、傘下にあった旧ラック、エー・アンド・アイ システム、アイティークルーの3社を吸収合併し、商号を「株式会社ラック」に変更。一体化された組織として、現在に至る事業基盤が確立されました。

その後、2013年12月にはKDDI株式会社が筆頭株主となり、両社の関係が強化されます。2014年1月には、サイバー攻撃に対するより高度な研究と対策提言を行うための専門部門「サイバー・グリッド・ジャパン」を開設しました。

近年の大きな動きとして、2025年1月にはKDDIによる株式公開買付け（TOB）が成立。これによりKDDIの議決権保有割合は90%を超え、株式会社ラックはKDDIの連結子会社となりました。その後、2025年2月25日をもって東京証券取引所スタンダード市場での上場が廃止され、同年2月27日には株式売渡請求を経てKDDIの完全子会社となっています。

事業セグメント

現在の株式会社ラックの事業は、主に以下の三つのセグメントに分けられます。

セキュリティソリューションサービス事業（SSS）: 高度な専門知識を要する情報セキュリティ関連のコンサルティング、診断、監視、緊急対応などのサービスを提供。
システムインテグレーションサービス事業（SIS）: 顧客の情報システムに関する企画、設計、開発、構築、運用、保守などを一貫して提供。
* ディーラー事業: 情報システムに関連するハードウェアやソフトウェアの販売、および付帯するサービスを提供。

これらの事業を通じて、株式会社ラックは変化し続ける情報技術の世界において、顧客のビジネス継続性と発展を支える安全で効率的な情報環境の実現に貢献しています。

もう一度検索