ラッテ・ストーン

ラッテ・ストーンは、グアムやサイパンを含むマリアナ諸島に特有の、サンゴ石でできた石柱群です。これらの石柱は、9世紀から17世紀にかけて、チャモロ人によって築かれた古代チャモロ文化の遺跡とされています。別名「タガ・ストーン」とも呼ばれ、これは古代マリアナ諸島の王「タガ」にちなんだものです。その独特な形状は、北マリアナ諸島の旗にも描かれており、地域を象徴する重要な文化的遺産となっています。

ラッテ・ストーンの形状は、直立した石柱「ハリギ」の上に、お椀型の石「タサ」が乗った、まるでキノコのような形をしています。このユニークな形状は、まるでエリンギのようにも見えます。グアムの首都ハガニャにあるラッテ・ストーン公園では、高さ約1.5メートルの石柱が6本ずつ2列に整然と並んでいます。一方で、テニアン島には高さ5メートルを超える巨大なラッテ・ストーンが存在し、その規模の大きさに圧倒されます。また、ロタ島にはラッテ・ストーンを切り出した石切場跡が残されており、当時の石材加工技術を今に伝えています。

ラッテ・ストーンの用途については、17世紀後半のスペインによるマリアナ諸島侵略によって、古代チャモロ文化が途絶えてしまったため、正確なことはわかっていません。しかし、その用途については様々な説が存在します。宗教施設としての役割、墓石としての使用、または建造物の土台としての利用など、多岐にわたる推測がなされています。

近年では、インドネシアのボロブドゥール遺跡に残された壁画に、アウトリガー付きの外洋帆船とともに、ラッテ・ストーンと思われる石柱の上に建造物が乗っている様子が描かれていることが発見されました。この発見は、ラッテ・ストーンが建造物の土台として使用されたという説を裏付ける有力な証拠として注目されています。この壁画は、ラッテ・ストーンが単なる装飾ではなく、実際の建築構造に関わっていた可能性を示唆しています。

また、先住民の間では、ラッテ・ストーンには「タオタオモナ」と呼ばれる祖先の霊が宿ると信じられており、畏怖の対象として、むやみに近づくことは避けられていました。この信仰は、ラッテ・ストーンが単なる石柱ではなく、祖先の魂が宿る神聖な存在として、特別な意味を持っていたことを示しています。

ラッテ・ストーンは、その独特な形状と謎めいた歴史から、多くの人々の関心を集め続けています。マリアナ諸島の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産であり、今後もその保護と研究が重要となるでしょう。その文化的価値は計り知れず、歴史の解明とともに新たな発見があるかもしれません。

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