ラトビアの地方行政区画

ラトビアの地方行政区分：複雑な歴史と現在進行中の改革

ラトビアの地方行政区分は、一見単純そうに見えますが、その歴史と現状は複雑に絡み合っています。現在、ラトビアは7つの直轄市（国家都市）と36の基礎自治体（地方都市、便宜上「市」と呼称）に区分されています。さらに、基礎自治体の下位区分として、都市型自治体（町）と行政教区（pagasts）が存在します。

この行政区分は、2020年6月23日に施行された「行政区域及び居住区域に関する法律」に基づいています。しかし、この法律はスムーズに施行されたわけではなく、多くの自治体から反発を受けました。46の自治体が大統領に対し法案の公布中止を求める共同書簡を送付するなど、激しい反対運動が展開されました。憲法裁判所には、この法律に関連する訴訟が19件も提起され、中には合併の差し止め判決も出されています。ヴァラクリャーニ市とレーゼクネ市の合併は、憲法裁判所の違憲判決により取り消され、ヴァラクリャーニ市は独立を維持することになりました。この例からもわかるように、ラトビアの地方行政区分は、現在もなお変遷を続けていると言えるでしょう。

2009年の大規模再編とその後

2009年には大規模な行政改革が行われ、それまで存在した地区（rajons）と町や市、教区の二重行政が解消されました。9直轄市と110の基礎自治体へと一元化されたものの、自治体間の規模や財政力の格差は依然として課題でした。2019年に就任したクリシュヤーニス・カリンシュ首相は、この格差是正を優先事項として掲げ、行政改革を推進しました。政府は環境保護および地域開発省（VARAM）の案を基に、自治体の再編を進めましたが、当初案と最終案では自治体の数に違いが見られました。最終的には7直轄市と35市の計42自治体となりましたが、この過程においても多くの議論や反対意見があったようです。

今後の予定：2029年地方選挙を見据えて

行政改革は現在も進行中で、2029年の地方選挙までに、4つの直轄市が同名の郊外の市と合併する予定となっています。これは、ダウガフピルス、イェルガヴァ、リエパーヤ、レーゼクネの4直轄市で、それぞれ近隣の市と合併し、新たな自治体を形成する計画です。ただし、これはあくまで予定であり、今後変更される可能性も残されています。2021年12月9日に採択された法律改正によって、2022年1月1日からは合併後の自治体一覧が公式に用いられるようになりました。この改正により、直轄市は2、基礎自治体は36に減少しました。

直轄市と市の構造：下位区分

基礎自治体（市）はさらに、都市型自治体（町）と行政教区（pagasts）に区分されます。一般的に、都市型自治体は行政教区よりも規模が大きいです。ただし、直轄市には都市型自治体と行政教区は存在しません。2022年1月1日時点で、都市型自治体が存在しないのはイェルガヴァ市のみです。オライネ市とサラスピルス市は、市名と同じ名称の都市型自治体と行政教区をそれぞれ1つずつ有しています。

歴史的な地方区分：多様な区分方法

現在の行政区分以外にも、ラトビアには歴史的な地方区分がいくつか存在します。統計目的や地域開発計画で使用される統計区域や開発区域などです。これらは、歴史的な地方区分であるクルゼメ、ゼムガレ、ヴィドゼメ、ラトガレ、リガ、ピエリガを参考に定められていますが、統計区域と開発区域の間でも、若干の違いが見られます。歴史的な地方区分は、ラトビア人のアイデンティティや文化、そして地域社会の理解に深く関わっており、現在もなお、その影響は色濃く残されています。

まとめ

ラトビアの地方行政区分は、長年にわたる歴史的変遷と、現在進行中の改革によって複雑な様相を呈しています。2020年の行政改革は、自治体間の格差是正を目指したものでしたが、その過程では多くの課題や反対意見が噴出しました。2029年の地方選挙までに予定されている合併など、今後も行政区分は変動していく可能性が高いでしょう。ラトビアの地方行政区分を理解するには、その歴史的背景と、現在進行中の改革を踏まえることが不可欠です。

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