ラファエル・プヤーナ

ラファエル・プヤーナ・ミケルセンは、1931年10月14日にコロンビアの首都ボゴタで生まれ、2013年3月1日にフランスのパリで亡くなった、同国を代表するチェンバロ奏者です。

彼の音楽教育は幼少期から始まりました。6歳で叔母からピアノの手ほどきを受け、その才能は早くから認められました。13歳でボゴタのコロン劇場において、ピアニストとして公式に舞台デビューを飾るという、異例の早熟ぶりを示しました。

音楽の探求のため、16歳でアメリカ合衆国へ渡り、ボストンのニューイングランド音楽院で研鑽を積みました。その後、ヨーロッパに留学し、チェンバロの分野では、20世紀におけるチェンバロ復興の先駆者であり伝説的な存在であったワンダ・ランドフスカにベルリンで師事。また、パリでは、数多くの著名な音楽家を育てた高名な音楽理論家・作曲家であるナディア・ブーランジェに作曲を学びました。これらの巨匠たちからの学びは、プヤーナのその後の音楽家人生に大きな影響を与えました。

国際的な演奏家としてのキャリアは、1957年のニューヨークでの鮮烈なデビューを皮切りに本格化しました。1966年にはロンドンでも成功を収め、世界的にその名を知られるようになります。彼の演奏活動は多岐にわたり、ヴァイオリニストのユーディ・メニューイン、指揮者のレオポルド・ストコフスキー、ギタリストのアンドレス・セゴビアといった、当時のクラシック音楽界を代表する錚々たる巨匠たちとの共演を通じて、その地位を確立しました。

プヤーナは、現代の作曲家たちによるチェンバロ作品の発展にも積極的に貢献しました。スペインの作曲家であるフェデリコ・モンポウやシャビエ・モンサルバーチェといった面々から作品の献呈を受けており、それらの作品の初演や普及に尽力しました。中でも、モンサルバーチェが彼のために書いた《アルバイシン協奏曲》は特に有名であり、プヤーナのレパートリーにおける重要な一角を占めています。

演奏活動と並行して、後進の指導にも熱心にあたりました。教育者としても著名であり、イギリスの指揮者で古楽研究者であるクリストファー・ホグウッドなど、後に国際的な古楽界で活躍する優れた音楽家たちを育てました。彼の指導は、次世代のチェンバロ音楽家や古楽演奏家たちにとって、かけがえのない財産となりました。

さらに、プヤーナは非常に価値の高い歴史的なチェンバロの熱心な収集家としても広く知られていました。彼が集めたオリジナルの楽器の数々は、古楽演奏の解釈や楽器製作の歴史を理解する上で極めて重要な資料となり、彼のコレクションをもとに、多くの高精度なレプリカが製作されました。これにより、失われつつあった歴史的なチェンバロの豊かな響きが現代に蘇り、古楽器復興の一端を担うこととなりました。

ラファエル・プヤーナは、その卓越した演奏技術、古楽に対する深い造詣、そして教育者および収集家としての多大な貢献を通じて、20世紀後半から21世紀初頭にかけてのチェンバロ音楽界において、傑出した存在であり続けました。彼の遺した功績は、今日の古楽演奏の発展においても、なおその影響力を保っています。

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